2023-01-01から1年間の記事一覧
「天皇とアメリカ」吉見俊哉、テッサ・モーリス-スズキ 集英社新書 2010 頭がぼんやりしてゐる。頭がぼんやりしてゐるのは昨夜寝つけなくて1時くらいに睡眠導入剤を飲んだからである。わたしはちょっと睡眠時間が足りないと活動できなくなり抑鬱的な気…
「13歳からの天皇制」堀新 かもがわ出版 2020 憲法における天皇の位置付け 大日本帝国憲法の1条に「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」とある。その根拠は神話である。 告文に「皇宗ノ神霊ニ誥ケ白サク皇朕レ天壌無窮ノ宏謨ニ循ヒ惟神ノ宝祚ヲ承…
前回はナーティヤ・シャーストラ(Natya Shastra)&アビナヤ・ダルパナ(Abhinaya Darpana)ノートだった。そちらも全然終わってゐないのだが、とりあえずこの記事をアップしてしまうのは、今日がクリシュナの誕生日だからである。今日の日付で投稿しておき…
「日本とドイツ 二つの戦後思想」仲正昌樹 光文社新書 2005 戦争責任をめぐる議論に関して、ドイツのヤスパースが提示した罪の概念が面白い。 ヤスパースは各人が負っている可能性のある「罪」の内容をはっきりさせるために、①刑法上の罪、②政治上の罪、…
もっとも典型的な陰謀論の語り口に「○○は死んでゐる/生きてゐる」というのがある。キム・ジョンウンは死んでゐるとか、マイケル・ジャクソンは生きてゐるとかいうもの。生を否認することで死を捏造し、逆に死を否認することで生を捏造する。否認することに…
昨日のレッスンは生徒さんがわたし含めて5人しかゐなかった。はじまった時なんかふたりだった。そういうときもある。わたしはこの二年、週二回のレッスンを一度も休んだことがない。ヌータン先生が休みで他の方が代行するとき欠席者があからさまに増えるの…
前回はナティヤ・クラマ(Natya Krama)ノートだった。ナティヤ・クラマとはアビナヤ・ダルパナ(Abhinaya Darpana)というインド舞踊の理論書に出てくる有名なシュローカ(歌)であった。 アビナヤ・ダルパナは、もっと古いナーティヤ・シャーストラ(Natya…
「バーン・アフター・リーディング」2008 アメリカ 監督:イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン 出演:ジョン・マルコヴィッチ、ティルダ・スウィントン、ジョージ・クルーニー、エリザベス・マーヴェル、フランシス・マクドーマンド、ブラッド・ピッ…
みずほ銀行からのはがきに「代替え方法」と書いてあった。代替(だいたい)を代替え(だいがえ)と読む/書くことがあるのは知ってゐたが、銀行からの案内というきちんとした場面で出くわしたので驚いた。代替(だいたい)は代替え(だいがえ)に駆逐されつ…
さきほど「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」の読書ノートを書いた。日本は外国から取り入れた概念を十分に咀嚼し、その上で新しい概念を生み出す努力を怠ったと書いてあった。その箇所を筆写しながら、福田恆存の「私の國語教室」を思い出してゐた。 「私…
「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」中公文庫 1991 著:戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎 聞きしに勝る名著だった。三月に(遠い昔のことのようだ!)「日本人の規律について」という文章を書いた。日本人は超越的次元…
「世阿弥 風姿花伝(100分de名著)」土屋惠一郎 NHK出版 2015 こないだ「ナティヤ・クラマ(Natya Krama)ノート」の中で日本には世阿弥の風姿花伝があるという文句を書いておきながら、実は読んだことがなかった。読もうと思った。しかし現代語訳で…
王 ダンスクラスにラジャさんというひとがゐる。ラジャさんは日本が好きで日本語が上手で、ときどきメールの遣り取りをする仲だ。ヌータン先生はラジャさんを呼ぶとき「ヘイ、ラジャ」と言う。名前がラジャさんだから当たり前だ。 それは分かるのだが、ラジ…
先日「トゥムリ(Thumri)ノート」という記事を書いた。気楽に書くことが出来ていい具合だと思った。この方法でたくさんちいさな記事を書き溜めて、それをまとめるかたちで長めの文章を書けばよい。 いま頭には三つある。一、インド舞踊およびカタックの全体…
昨日8月15日は敗戦の日。 夜遅くにダンスレッスンだから夕飯は軽めに済ませた。そしたら先生から、今日は休みにします、「Happy Independence Day to everyone!」とメッセージが届いた。そうかインドは独立記念日なのか。 日本の敗戦日がインドの独立記念…
「街とその不確かな壁」村上春樹 2023 新潮社 やっと村上春樹の新作が読めた。いやあ、どうしよう、つまらなかった。時間が経つと印象が変わるかもしれないけれど、読み終えた直後の感想を書くと、これまででいちばん退屈な長篇だった。いや違う。退屈と…
「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」2023 アメリカ 監督:クリストファー・マッカリー 出演:トム・クルーズ、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、 ヴィング・レイムス、ヴァネッサ・カービー ほか www.youtube.com 昨年…
「カールじいさんの空飛ぶ家」2009 アメリカ 監督:ピート・ドクター www.youtube.com 帰省中に実家のハードディスクに録画してあったのを見た。感激した。素晴らしい作品だ。「老い」が主題。冒頭「いつかやろう」を先延ばしにしてゐるうちに老人になっ…
「日本近現代史講義」山内昌之/細谷雄一 編著 8月14日。大型の颱風が近づいてゐる。明日近畿に上陸。新幹線一部運休決定。東京はまだ晴れてゐる。午後から雨らしいが犬のシャンプーを予約してゐる。豪雨でなければなんとかなるだろう。シャンプーのあいだ…
リュウジのバズレシピに出会ってから料理が楽しくなった。オレも料理が出来る、という実感を初めて得た。それまでも料理はしてゐた。毎日、ほとんど自炊してきた。けれども「いま料理をしてゐるな」という意識も、「自分は料理が出来る人間だ」という自覚も…
「サピエンス全史」ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社 2016年 歴史を研究するのは、未来を知るためではなく、視野を拡げ、現在の私たちの状況は自然なものでも必然的なものでもなく、したがって私たちの前には、想像しているよりずっと多くの可能性が…
再生回数を稼いだり、沼らせたり、推し活動へ誘ったりするために、コンテンツ制作者は消費者を中毒にさせるべく様々な工夫を凝らしてゐる。受け取るほうも「すごい中毒性だ~」とこれを誉め言葉として使ってゐる。 私も優れたコンテンツに触れてしばしば中毒…
「深遠なる「幾何学」の世界」マイク・ゴールドスミス 銀河、カタツムリの殻、雄ヒツジの角、象の牙、ヒマワリの種の並び方など、自然界にはらせん構造が多く見られる。曲線の間隔が絶え間なく広がっていく。このらせんを対数らせんという。間隔がずっと変わ…
ここふたつきほどトゥムリ(Thumri)を習ってゐる。ビンダディン・マハラジ(Bindadin Maharaj 1980-1918)がつくったトゥムリらしい。ビンダディン・マハラジはいちばん有名なビルジュ・マハラジ(1938-2022)の祖父の兄。祖父の兄を指す呼称はなんというの…
「ドーキンス博士が教える「世界の秘密」」リチャード・ドーキンス 早川書房 2012 物質を極限まで細かく小さくしていくと、ほとんど「空白」になってしまい、その水準では「個体」とか「形」という概念が意味をもたなくなる。この説明は別の本でも読んだ記憶…
三連休。東北は大雨で災害、九州から関東は災害級(って何なん)の猛暑。梅雨は明けたんですかね。なんか雨の降り方も夏の暑さも子供のころとまるでちがってしまった。雨季って感じ。春夏秋冬のうち夏がどんどん巨大化して、春が呑まれてしまったみたい。秋…
「新釈雨月物語」石川淳 角川文庫 1994 上田秋成「雨月物語」の石川淳による現代語訳、ではなくて新釈、というのは、解説によれば、原文がほとんどそのまま残ってゐる部分があったり、あるいは削ったり、逆に足したりということを自在におこなって出来上…
「すぐわかる イスラームの美術」桝屋友子 東京美術 2009 11頁 ☝の年表はありがたい。いつごろどこにどんな王朝が栄えたかが一目でわかる。こういうおおまかな発展の歴史、影響関係をすっかり頭に入れてしまいたいのだが、なかなかね。 アッバース朝は七…
安倍元首相の暗殺から一年が経った。銃撃現場である奈良市の西大寺駅前は私の地元と言っていい場所である。また山上徹也被告が卒業したとされるK高校は私の母校でもある。年齢は6歳離れてゐるから校内で会った可能性はないが、生活の動線はかなり近かった…
「リヴァイアサン 近代国家の思想と歴史」長尾龍一 講談社学術文庫 1994 私はホッブズ、ケルゼン、シュミットという三人の思想家の国家論を基軸として、国家史を再構築するという試みを、すでに三十年以上に亘って続けてきた。その間私を導いてきた基本…