本と映画
「インド宗教興亡史」保坂俊司 ちくま新書 2022 アーリア人によるヴェーダの宗教以前から存在した土着の宗教 従来の研究では、ダーサなどの土着宗教について明確な言及はされてこなかった。というのも、これらの宗教には、ヴェーダ聖典のようなまとまっ…
「音の神秘 生命は音楽を奏でる」 ハズラト・イナーヤト・ハーン著、土取利行訳、平河出版社 1998 ヴィーナの演奏家で歌手で詩人、総合的音楽家、スーフィズムの西洋への紹介者とある。日本でいえば鈴木大拙とか岡倉天心みたいな位置付けになるのかな。…
「聖と俗 宗教的なるものの本質について」 ミルチャ・エリアーデ 法政大学出版局 1969 神話の主要な機能は、すべての祭儀ならびにすべての人間の本質的活動(食事、性生活、労働、教育)に対する模範的典型を確立することである。人間が人間存在として充…
「日本の税金 第3版」三木義一 岩波新書 2018 なぜ、「減税」が正義の主張なのだろう。おそらく、税を支払ったことによる恩恵を実感できない政治が行われているからであろう。 キャプションに記したあとがきの言葉に尽きる。政治がひどすぎるのだ。過去…
「名著誕生『コーラン』」ブルース・ローレンス 訳:池内恵 ポプラ社 2008 「すべての徴には外面と内面があり、限界と可能性がある」ムハンマド 「解釈」の学。 時間が経つとコーランの時代のアラビア語が分からなくなる。だから解釈が必要となる。また…
「ヒンドゥー教の聖典二篇 ギータ・ゴーヴィンダ デーヴィー・マーハートミャ」 小倉泰、横地優子 訳注 平凡社 2000 「ギータ・ゴーヴィンダ」クリシュナとラーダーの性愛が絶頂に達する場面。 ギータ・ゴーヴィンダ 解説から引く。 牛飼いの乙女ラーダ…
「加藤周一著作集8」加藤周一 平凡社 1979 理想主義がないということと、現状を現状であるからという理由で容認するのとは同じことである。 天皇制を論ず 1946年 敗戦の翌年に書かれた文章。加藤は27歳とまだ若い。天皇制を速やかにやめねばならない…
「訂正可能性の哲学」東浩紀 ゲンロン 2023 まづ第一部、ウィトゲンシュタインとクリプキの読み替えによる「家族」概念の再定義がベラボーに面白い。そして今度はその議論をふまえてルソーの読解を行う第二部がこれまた圧倒的に面白い。じつはさっきの概…
「加藤周一著作集7」加藤周一 平凡社 1979 学校の教科書で読んだ雑種文化論を二十年ぶりに読み返したくなって書庫から出してもらった。著作集前半におかれた日本文化の雑種性を論じたいくつかの論文よりも、後半の「戦争と知識人」や「日本人の外国観」など…
「日本二千六百年史」大川周明 毎日ワンズ 2017 大川周明は昔の凄い知識人のひとりだ。語学に堪能で、万巻の書を読破し、日本ではじめてコーランの全訳をしたひと。間違いなく破格の人物である。敗戦後には民間人としてただ一人、極東国際軍事裁判でA級戦犯…
「観光客の哲学 増補版」東浩紀 ゲンロン 2023 「観光客の哲学」に犬の話が出てくる。 家族という言葉は、いまの日本ではじつは、ここまで見てきた意味よりもさらに柔軟に使われている。というのは、最近では、犬や猫のようなペットも「家族」と見なされ…
「仁斎・徂徠・宣長」吉川幸次郎 岩波書店 1975 伊藤仁斎と荻生徂徠と本居宣長についての論文を集めたもの。宣長に関する二篇は「本居宣長」で既読であったため読まなかった。いや再読したい気持ちはあったが時間がなくて読めなかった。 江戸川区の図書…
「天皇とアメリカ」吉見俊哉、テッサ・モーリス-スズキ 集英社新書 2010 頭がぼんやりしてゐる。頭がぼんやりしてゐるのは昨夜寝つけなくて1時くらいに睡眠導入剤を飲んだからである。わたしはちょっと睡眠時間が足りないと活動できなくなり抑鬱的な気…
「13歳からの天皇制」堀新 かもがわ出版 2020 憲法における天皇の位置付け 大日本帝国憲法の1条に「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」とある。その根拠は神話である。 告文に「皇宗ノ神霊ニ誥ケ白サク皇朕レ天壌無窮ノ宏謨ニ循ヒ惟神ノ宝祚ヲ承…
「日本とドイツ 二つの戦後思想」仲正昌樹 光文社新書 2005 戦争責任をめぐる議論に関して、ドイツのヤスパースが提示した罪の概念が面白い。 ヤスパースは各人が負っている可能性のある「罪」の内容をはっきりさせるために、①刑法上の罪、②政治上の罪、…
「バーン・アフター・リーディング」2008 アメリカ 監督:イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン 出演:ジョン・マルコヴィッチ、ティルダ・スウィントン、ジョージ・クルーニー、エリザベス・マーヴェル、フランシス・マクドーマンド、ブラッド・ピッ…
「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」中公文庫 1991 著:戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎 聞きしに勝る名著だった。三月に(遠い昔のことのようだ!)「日本人の規律について」という文章を書いた。日本人は超越的次元…
「世阿弥 風姿花伝(100分de名著)」土屋惠一郎 NHK出版 2015 こないだ「ナティヤ・クラマ(Natya Krama)ノート」の中で日本には世阿弥の風姿花伝があるという文句を書いておきながら、実は読んだことがなかった。読もうと思った。しかし現代語訳で…
「街とその不確かな壁」村上春樹 2023 新潮社 やっと村上春樹の新作が読めた。いやあ、どうしよう、つまらなかった。時間が経つと印象が変わるかもしれないけれど、読み終えた直後の感想を書くと、これまででいちばん退屈な長篇だった。いや違う。退屈と…
「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」2023 アメリカ 監督:クリストファー・マッカリー 出演:トム・クルーズ、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、 ヴィング・レイムス、ヴァネッサ・カービー ほか www.youtube.com 昨年…
「カールじいさんの空飛ぶ家」2009 アメリカ 監督:ピート・ドクター www.youtube.com 帰省中に実家のハードディスクに録画してあったのを見た。感激した。素晴らしい作品だ。「老い」が主題。冒頭「いつかやろう」を先延ばしにしてゐるうちに老人になっ…
「日本近現代史講義」山内昌之/細谷雄一 編著 8月14日。大型の颱風が近づいてゐる。明日近畿に上陸。新幹線一部運休決定。東京はまだ晴れてゐる。午後から雨らしいが犬のシャンプーを予約してゐる。豪雨でなければなんとかなるだろう。シャンプーのあいだ…
「サピエンス全史」ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社 2016年 歴史を研究するのは、未来を知るためではなく、視野を拡げ、現在の私たちの状況は自然なものでも必然的なものでもなく、したがって私たちの前には、想像しているよりずっと多くの可能性が…
「深遠なる「幾何学」の世界」マイク・ゴールドスミス 銀河、カタツムリの殻、雄ヒツジの角、象の牙、ヒマワリの種の並び方など、自然界にはらせん構造が多く見られる。曲線の間隔が絶え間なく広がっていく。このらせんを対数らせんという。間隔がずっと変わ…
「ドーキンス博士が教える「世界の秘密」」リチャード・ドーキンス 早川書房 2012 物質を極限まで細かく小さくしていくと、ほとんど「空白」になってしまい、その水準では「個体」とか「形」という概念が意味をもたなくなる。この説明は別の本でも読んだ記憶…
「新釈雨月物語」石川淳 角川文庫 1994 上田秋成「雨月物語」の石川淳による現代語訳、ではなくて新釈、というのは、解説によれば、原文がほとんどそのまま残ってゐる部分があったり、あるいは削ったり、逆に足したりということを自在におこなって出来上…
「すぐわかる イスラームの美術」桝屋友子 東京美術 2009 11頁 ☝の年表はありがたい。いつごろどこにどんな王朝が栄えたかが一目でわかる。こういうおおまかな発展の歴史、影響関係をすっかり頭に入れてしまいたいのだが、なかなかね。 アッバース朝は七…
「リヴァイアサン 近代国家の思想と歴史」長尾龍一 講談社学術文庫 1994 私はホッブズ、ケルゼン、シュミットという三人の思想家の国家論を基軸として、国家史を再構築するという試みを、すでに三十年以上に亘って続けてきた。その間私を導いてきた基本…
「幾何学の不思議」ミランダ・ランディ アルケミスト双書 2011 「美しい曲線の幾何学模様」リサ・デロング アルケミスト双書 2014 なんという本だったか覚えてゐない、だいぶん昔に読んだ本だ。たぶん多田富雄と河合隼雄の対談だったと思う、そこで…
「フランス革命 歴史における劇薬」遅塚忠躬 岩波ジュニア新書 1997 聞きしにまさる名著だった。感動した。こんなふうに深く分かりやすく面白く書かれた本はそうないと思う。しっかりとノートをまとめたいところだが、時間がない。ああ、時間がないとか…