手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

「幾何学の不思議」「美しい曲線の幾何学模様」

幾何学の不思議ミランダ・ランディ アルケミスト双書 2011

美しい曲線の幾何学模様」リサ・デロング アルケミスト双書 2014

なんという本だったか覚えてゐない、だいぶん昔に読んだ本だ。たぶん多田富雄河合隼雄の対談だったと思う、そこで多田がアンモナイトの渦巻きの話をしてゐた。

アンモナイトの渦巻きがあるでしょう、あれはたいへん美しいもので、パカっと開いてみると非常に複雑に進化してゐる。けれどもそこに合理的な意味はないんです。食べるために歯があるとか、見るために目があるとか、そういうふうに、なにかの役に立つために出来たものではない、何億年も生きてゐるなかで、無意味にああいう美しい模様をつくっていったわけです。

みたいな内容。私はこの話が好きで、その箇所だけは妙に記憶に残ってゐる。渦巻き模様を見る度に、太古の海深く、無意味・無目的に美しい殻をつくってゐたアンモナイトのことを想い出す。渦巻きは美しいだけではない、生命力を感じる。自然のなかにはたくさんの渦巻きがあり、そこには黄金比が隠れてゐるらしい。不思議なことだ。

美しいと感じたり、生命力を見出したりする「かたち」があること。その「かたち」は幾何学という学問で分析できること。そして美的感覚からも知的分析からも、最終的にはどうしても人知を超えた神秘的なものを求めずにはをれないこと。なにもかも、不思議である。

幾何学の不思議』29頁

 渦巻は驚きに満ちたすばらしい形である。自然界の随所にありとあらゆるスケールで見られる。(・・・)

 右頁下の図は黄金比の渦巻で、自然界によく見られる。黄金比の長方形(ジョージ王朝様式の玄関や窓がその例)は、そこから正方形を切り取った残りも黄金比の長方形になるという性質をもつ。その性質を用いて、それぞれの正方形に4分円を描いていくと、黄金比の渦巻ができる。 『幾何学の不思議』28頁

『美しい曲線の幾何学模様』19頁

 葉には驚くべき性質がある。生きるのに必要な栄養を光から作ることができる。それぞれの葉は、同じ植物の葉と基本的には同じ構造をしていながら、全く同じ形の葉は一つもない。葉脈は、その植物全体の縮図であるかのようだ。(・・・)こうした自然の多種多様で深遠な形に気づき、それを学び、模様として様式化するには、直線、曲線、形状、共通する特性、個別の特性に対する完成が必要となる。 『美しい曲線の幾何学模様』18頁

『美しい曲線の幾何学模様』45頁

 聖典の装飾としてもっとも頻繁に登場するのが、植物をモチーフにした模様である。章や節の始まりの頁では、葉や花を伴うつるや茎が周囲を覆っている。楽園を描いた見開きの口絵には、金色のつるや葉、花がふんだんにあしらわれている。 『美しい曲線の幾何学模様』44頁