手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

社会・政治

2023年のこと

世の中のこと 2022年に始まったウクライナでの戦争が継続中である。今年10月にはイスラエル・ハマス紛争が勃発し、ガザ地区では非戦闘員の虐殺が行われてゐる。この数年はのちに第三次世界大戦の序章であったと記述されるのではないかと誰かが言ってゐ…

「日本の税金 第3版」三木義一

「日本の税金 第3版」三木義一 岩波新書 2018 なぜ、「減税」が正義の主張なのだろう。おそらく、税を支払ったことによる恩恵を実感できない政治が行われているからであろう。 キャプションに記したあとがきの言葉に尽きる。政治がひどすぎるのだ。過去…

インボイス制度私感

いよいよインボイス制度が導入される。わたしは昨年職業訓練学校に通って簿記2級を取得し、現在某流通関係の中小企業で派遣社員として就業中の駆け出し経理マンである。駆け出しなのでたいした仕事はしてゐないが、インボイス制度のためにあれこれ事務処理…

芥川龍之介の陰謀

もっとも典型的な陰謀論の語り口に「○○は死んでゐる/生きてゐる」というのがある。キム・ジョンウンは死んでゐるとか、マイケル・ジャクソンは生きてゐるとかいうもの。生を否認することで死を捏造し、逆に死を否認することで生を捏造する。否認することに…

前提ぬきで、いきなりアンティテーゼの中にのめりこんで行く。

さきほど「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」の読書ノートを書いた。日本は外国から取り入れた概念を十分に咀嚼し、その上で新しい概念を生み出す努力を怠ったと書いてあった。その箇所を筆写しながら、福田恆存の「私の國語教室」を思い出してゐた。 「私…

「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」

「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」中公文庫 1991 著:戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎 聞きしに勝る名著だった。三月に(遠い昔のことのようだ!)「日本人の規律について」という文章を書いた。日本人は超越的次元…

敗戦と独立

昨日8月15日は敗戦の日。 夜遅くにダンスレッスンだから夕飯は軽めに済ませた。そしたら先生から、今日は休みにします、「Happy Independence Day to everyone!」とメッセージが届いた。そうかインドは独立記念日なのか。 日本の敗戦日がインドの独立記念…

「日本近現代史講義」山内昌之/細谷雄一 編著

「日本近現代史講義」山内昌之/細谷雄一 編著 8月14日。大型の颱風が近づいてゐる。明日近畿に上陸。新幹線一部運休決定。東京はまだ晴れてゐる。午後から雨らしいが犬のシャンプーを予約してゐる。豪雨でなければなんとかなるだろう。シャンプーのあいだ…

安倍元首相暗殺から一年

安倍元首相の暗殺から一年が経った。銃撃現場である奈良市の西大寺駅前は私の地元と言っていい場所である。また山上徹也被告が卒業したとされるK高校は私の母校でもある。年齢は6歳離れてゐるから校内で会った可能性はないが、生活の動線はかなり近かった…

「リヴァイアサン 近代国家の思想と歴史」長尾龍一

「リヴァイアサン 近代国家の思想と歴史」長尾龍一 講談社学術文庫 1994 私はホッブズ、ケルゼン、シュミットという三人の思想家の国家論を基軸として、国家史を再構築するという試みを、すでに三十年以上に亘って続けてきた。その間私を導いてきた基本…

「フランス革命 歴史における劇薬」遅塚忠躬

「フランス革命 歴史における劇薬」遅塚忠躬 岩波ジュニア新書 1997 聞きしにまさる名著だった。感動した。こんなふうに深く分かりやすく面白く書かれた本はそうないと思う。しっかりとノートをまとめたいところだが、時間がない。ああ、時間がないとか…

気管支炎

5月31日(水)から咳が出始めた。土日休めば治るだろうと思ってゐた。私は虚弱体質で体調が悪いのはいつものこと、風邪もしょっちゅうだ。でも医者にかかるほどになるのは稀で、しっかり寝ればたいてい治るから。 しかし今回はちがった。日曜の夜、咳が止…

「A」「A2 完全版」

「A」1998 「A2 完全版」2002 監督:森達也 www.youtube.com www.youtube.com アマプラに入ってゐたので鑑賞。信者のみなさん結跏趺坐が上手。綺麗。映画を見て知れる限りヨーガの行法は一般的なもの、教義もよく聞く仏教・ヒンドゥー教世界のそれで…

「一下級将校の見た帝国陸軍」山本七平

「一下級将校の見た帝国陸軍」山本七平 文春文庫 1987 昨今、戦前回帰とか新しい戦前という言葉が現在の政治状況に警鐘を鳴らすために使われる。なるほど第二次安倍政権からこっちの凄まじい劣化をみると確かに大日本帝国の末期はこんな感じだったのかも…

「砂漠と異人たち」宇野常寛

「砂漠と異人たち」宇野常寛 朝日新聞出版 2022 すてきな装丁。写真が下手ですみません 宇野さんの影響を受けて最近「ガンダム」を見てゐる。Amazonプライムに第一シリーズが入ってゐた。これまでテレビシリーズも映画もまったく見たことがなかった。こ…

「免疫学者が語る パンデミックの「終わり」と、これからの世界」小野昌弘

「免疫学者が語る パンデミックの「終わり」と、これからの世界」 小野昌弘 筑摩書房 2022 コロナパンデミックがはじまって3年が経過した。みんないろいろ我慢したり、自分の考えと違ったことを要請されたりして、鬱憤がたまってゐる。 鬱憤がたまると…

「ジョブ型雇用社会とは何かー正社員体制の矛盾と転機」濱口桂一郎

「ジョブ型雇用社会とは何かー正社員体制の矛盾と転機」濱口桂一郎 2021 岩波新書 日本型雇用システムのどのあたりに問題があるかがわかった。そして、それがどうも短期的に解決できるような問題ではなさそうだという印象をもち、まあ問題というのは常にそう…

「現代思想2022年12月号 特集=就職氷河期世代/ロスジェネの現在」

「現代思想2022年12月号 特集=就職氷河期世代/ロスジェネの現在」青土社 雨宮処凛、生田武志、杉田俊介の三氏による巻頭鼎談「この荒野のような世界で」が面白い。生田武志さんの次の発言に同意。 生田(・・・)非正規雇用の問題というと派遣の問題…

「社会をつくれなかったこの国がそれでもソーシャルであるための柳田國男入門」大塚英二

「社会をつくれなかったこの国がそれでもソーシャルであるための柳田國男入門」 大塚英二 角川EPUB選書 2014 「遠野物語」くらいしか読んだことがないぼくにはとても新鮮だった。 近代社会はぼくたちを「イラつかせる」左翼的なことばと、ぼくたちを「心…

2022年のこと

年の瀬である。 2022年はひどい年だった。世界も日本も、今年はとてもひどい年だったと思う。具体的になにが起ったかを記憶にとどめておくために、自分なりに思うところを書いておこうと机に座った。でも無理だった。 数時間ねばっていろいろ書いた。け…

「新海誠論」藤田直哉

「新海誠論」藤田直哉 作品社 2022 新海誠監督が柄谷行人の「日本近代文学の起源」を読んで風景を描く手法に影響を受けたと書いてあって驚いた。なるほどそう言われるとたしかにそんな感じだ! というかまさにそれだよ! 最近柄谷さんの「力と交換様式」…

「心臓を貫かれて」マイケル・ギルモア

「心臓を貫かれて 上・下」マイケル・ギルモア 文春文庫 1999 翻訳:村上春樹 悲惨な事件が起ったときぼくたちはなぜこんなことになったのかと問う。いったいどこで間違えたのか、どの時点でこうなることが確定したのか、どこまで遡りなにをどうやり直せ…

「暇と退屈の倫理学」國分功一郎

「暇と退屈の倫理学」國分功一郎 新潮文庫 2021 ハイデガーの退屈論における「退屈の第二形式」には驚嘆した。國分さんが繰り返し「すぐれた発見である」と強調するのもわかる。そこを読んだところで、あまりに興奮したから、散歩に出てしばらく考えてし…

別の道もある

民主主義の危機 安倍政権の完成(は御免だ) 別の道もある 民主主義の危機 7月8日、安倍晋三・元首相が参院選の街頭演説中に銃撃されて死亡した。この10年の政治は安倍VS反安倍という図式で展開された。ぼくは明確に反安倍であり、政権交代が必要と考え…

安心感

朝、犬の散歩をしてゐるときに、小学生の女の子二人組に出会った。聞けば、社会科見学で国会議事堂へ行くのだという。ということはたぶん5年生か6年生だろう。最近ぼくは「マスクいつまでつけるのか問題」に関心をもってゐるので、小学生はどう感じてゐる…

今年の花粉は

今年の花粉はしんどかった。引越したのであたらしい耳鼻科を見つけて薬をもらった。有名なアレグラ(フェキソフェナジン)を処方されたのだが、一錠では効かず、倍量の一回二錠を飲むことになった。アレグラは身体にやさしい薬なので倍量でもなにも問題ない…

「なぜ君は総理大臣になれないのか」

「なぜ君は総理大臣になれないのか」2020 日本 監督:大島新 出演:小川淳也 父曰く: 「息子は政治家に向いてゐないようにも感じる。あのようなゲテモノばかりの世界に、純な息子は似合わないのではないか。一方で、息子のような、国民に本当のことを言…

「マスコミが報道しない真実」について

だって牛が飲むものなんですよ 体内に異物を取り込む マスコミが報道しない真実 サンクコスト、バイアス、フェイク 代替医療、スピリチュアル 反日依存型愛国 消された真実、受難の物語 凡庸であること だって牛が飲むものなんですよ 20代の半ばに5年ほど…

もう第4波なのか、、、

ついこの間まで第3波の渦中にあったと思ったら、もう第4波が来たらしい。驚いてゐる。いったいどうなってゐるのだろう。第3波ということが言われだしたのは昨年の11月だった。その波がどんどん大きくなって、今年の1月8日に緊急事態宣言が発出され、…

過渡期

1、 東日本大震災と福島第一原発事故から10年が経った。今でも4万人以上の人が避難してゐる。原子炉に残るデブリ(溶け落ちた核燃料)を取り出すことができるのか、いまだ不明であり、汚染水処理の目途もついてゐない。廃炉までの道のりは遠い。事故の記…