手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り🌴

「なぜ君は総理大臣になれないのか」

「なぜ君は総理大臣になれないのか」2020 日本 監督:大島新 出演:小川淳也

父曰く:

「息子は政治家に向いてゐないようにも感じる。あのようなゲテモノばかりの世界に、純な息子は似合わないのではないか。一方で、息子のような、国民に本当のことを言える人間が政治家にならないと、この国はもうダメだとも思う」

ぼくも同じことを感じた。びっくりするくらい純粋で熱くてチャーミングだから応援したくなるけれども、安倍や麻生や小池といったゲテモノのほうが政治の世界では勝っちゃうのかなと。

実際、小川淳也は2017年の民進党解体の際に、小池百合子希望の党(翌年解党)を選んでしまった。このときの苦悩が本作品のクライマックスだ。ここで無所属で出るか、あるいは立憲民主党に入ってゐたら、いま党首であったかもしれない。

2017年の衆院選は醜悪だった。森友・加計問題への批判が高まり、安倍政権の支持率は35%にまで落ち込んだ。国会を開けばボロが出てるので、与党は臨時国会開会要求を無視することにした。このとき、トランプがキム・ジョンウンを挑発し、キム・ジョンウンがそれに応じてミサイル実験をするという米朝の応酬が繰り返されてゐた。安倍はこれを利用することに決めた。

世界中が対話を呼びかけるなかで、日本だけが「対話は無に帰した、もっと圧力を」と煽り立て、国内の反北朝鮮感情を沸騰させた。そして9月28日、臨時国会開会要求を98日間無視(ひどい憲法違反だ)した末に、ついに臨時国会を召集。所信表明演説も行わずに安倍首相は衆議院の解散を宣言した。「国難突破解散」だ。

この混乱をチャンスと見た小池百合子東京都知事希望の党を結成、マスコミ報道は小池フィーバーとなった。ここで民進党の代表・前原誠司希望の党との合流を決定。民進党は消滅。ところが小池百合子民進党内のリベラル派を「排除します、うふふ」と言ってしまう。この「うふふ」が顰蹙を買い、希望の党は失速。市民から「枝野立て」の声が起り、これに応えた枝野幸男立憲民主党を立ち上げ、善戦して野党第一党となった。

自民党は「北朝鮮のおかげ」で勝利したが、朝鮮半島の平和にも朝鮮戦争終結にも協力する気がないことを国際社会に示すかたちとなった。北朝鮮との交渉の道は絶たれ、「最優先課題」「一丁目一番地」と言ってゐた拉致問題の解決は遠のいた。日米同盟のもとでアジア蔑視を温存する、安倍政権は戦後レジームそのものだ。

2020年、安倍はコロナ対策の失敗が響いて支持率が下がり、持病が悪化して退陣。長く官房長官を務めた菅義偉がこれを継ぐも、翌2021年、デルタ株の対応に失敗して退陣。そして秋、安倍の影響下にある岸田文雄が新首相となった。安倍は体調も良好らしく自民党の最大派閥を率いてゐる。要するに、安倍政治が続いてゐる。

安倍の虚言を糊塗するために公文書改竄が行われ、実務を担当した近畿財務局職員・赤木俊夫さんが自殺するに至った森友学園問題は、責任者の佐川宣寿理財局長はじめ全員が不起訴となり、誰ひとり刑事責任は問われなかった。

2020年、赤木さんの妻・雅子さんは損害賠償を求めて国を提訴。雅子さんはこの訴訟によって真相究明がなされることを望んでゐたが、先日、2021年12月15日、国側は賠償責任を認めて裁判を終了させた(「認諾」というらしい)。高い賠償金を払うからもういいでしょ、黙っててね、ということだ。非道だ。

小川淳也は2020年に新・立憲民主党に合流。2021年には代表戦に出馬し落選。新代表・泉健太のもと政務調査会長に就任した。来年夏に参院選がある。ぼくは野党共闘を応援する。政権交代が必要だ。自民党政治を終らせないといけない。野党は頼りない/だらしない/批判ばっかり、とか言ってる場合ぢゃないだろう。

ところで、「なぜ君は総理大臣になれないのか」の続編「香川1区」が近日公開されるようだ。近くの劇場で上映されるなら見に行きたいな✨

www.youtube.com