手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

インボイス制度私感

いよいよインボイス制度が導入される。わたしは昨年職業訓練学校に通って簿記2級を取得し、現在某流通関係の中小企業で派遣社員として就業中の駆け出し経理マンである。駆け出しなのでたいした仕事はしてゐないが、インボイス制度のためにあれこれ事務処理が発生し、月末月初はただでさへ忙しいのに、てんやわんやである。

インボイス制度導入にともなう事務の増大は、端的に言ってブルシットジョブだと思う。愚かなる政治による国民へのブルシットジョブの押し付けである。いたづらに制度が複雑になるばかりで、いろいろ読んでもよく分からない。

勉強すると理解は深まるが、深まったらその分だけやっぱりこりゃダメだと思う度合いが強まるので、ブルシットジョブ感が俄然大きくなる。この制度が、総合的に、経済全体によい影響を与えるとは到底考えられない。複数税率に対応するためというが、それでこのようにこんががった制度が必要なら複数税率のほうをやめたらよいではないか。

これまで免税(ズル)だった事業者から徴税するのは平等の実現だという意見があるが、その種の「平等」は挑戦や創造性の芽をつぶすことになり、格差増大と階級の固定につながり、全体としては貧しくなるだけだ。なぜこの簡単な理屈が分からないのか。

少し税収は増えるのだろうが、官製ブルシットジョブのせいで生産性が下がり、小規模事業者から活力と元気を奪うのだとしたら、総合的にはマイナスでしょう。政府は小規模事業者などに対する支援策を検討してゐるという。わけもなく殴っておいてこれで安心しろと包帯を渡すような不条理さがある。

徴税の方法にしても、税金の使途にしても、おかしなことが多すぎる。やはり政治家に目指すべき社会や国家についてのビジョンがないからだろう。だからわれわれの血税が大イベントやら防衛費やら謎の官民事業やらに消えてゆく。

大きなビジョンは人間文化への深い理解からしか生まれない。インボイス制度が文化領域を担うひとびとに対してことに大きな影響を与えるとすれば、これを是とするわけにはいかない。万博、保険証の廃止、インボイス制度。やめる勇気を持ってほしい。