手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

本と映画

「ムガル美術の旅」山田篤美

「ムガル美術の旅」山田篤美 朝日新聞社 1997 アマゾンで調べてみると、山田篤美さんは本書でデビューしたあとは「黄金郷(エルドラド)伝説 スペインとイギリスの探険帝国主義」「真珠の世界史 富と野望の五千年」といった本を書いてゐる。非常に長い時…

「決算書はここだけ読め!」前川修満

「決算書はここだけ読め!」前川修満 講談社現代新書 2010 去年、職業訓練学校に通って簿記2級をとった。いま経理の実務経験を積んでゐる。そういう自分にはちょうどいい復習になる本だった。内容的には簿記3級くらい。そのなかで、まさに「ここだけ読…

「鹿鳴館」三島由紀夫

「鹿鳴館」三島由紀夫 新潮文庫 1984 鹿鳴館 面白い。各登場人物の性格と欲望、また人間関係が分かりやすく描かれてゐる。誤読の余地のないような書き方がされてゐると感じた。すごい親切設計だ。展開が大きく且つ速い。劇場で見たらさぞ楽しい芝居だろ…

「サド侯爵夫人・わが友ヒットラー」三島由紀夫

「サド侯爵夫人・わが友ヒットラー」三島由紀夫 新潮文庫 2020 「サド侯爵夫人」「わが友ヒットラー」二篇の戯曲を収める。後者のほうが面白かった。三島は自作解題で次のように書く。 この三幕の戯曲で私が書きたかったのは、一九三四年のレーム事件で…

「共産党宣言」マルクス エンゲルス

「共産党宣言」マルクス エンゲルス 岩波文庫 1951 プロレタリアは、革命においてくさりのほか失うべきものをもたない。かれらが獲得するものは世界である。万国のプロレタリア団結せよ! カッコイイ。150年前に書かれた檄文だから内容的には古びたと…

「伊藤真の法学入門 講義再現版」伊藤真

「伊藤真の法学入門 講義再現版」伊藤真 日本評論社 2010 読んでよかった。勉強になった。憲法学者が学校で法学教育をやったほうがいいと言うのをときどき聞くけど、まったくその通りだ。ここに書いてあるような内容を高校で教えるべきだ。政治と社会が…

「ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界」阿部謹也

「ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界」阿部謹也 ちくま文庫 1988 鼠退治をしたら金をくれるという約束だったのに、ハーメルン市民はそれを反故にした。男は怒る。笛を吹くと、こんどは子供たちが大勢走り寄ってきた。男は130人の子供たちと山に入…

「近代能楽集」三島由紀夫

「近代能楽集」三島由紀夫 新潮文庫 1968 仕事が忙しいというのもあるがとにかく天候不順がひどすぎる。4月しんどかった、5月もしんどかった。虚弱体質の自分には本当につらい。腰も痛い。冷房が欲しいくらい暑いと思えば、夜寝るときには毛布を出した…

「AIR/エア」

「AIR/エア」2023 アメリカ 監督:ベン・アフレック 出演:マット・デイモン、ベン・アフレック、ジェイソン・ベイトマン、ヴィオラ・デイヴィス、クリス・タッカー ほか www.youtube.com 公開したばかりなのにアマゾンプライムに入ってゐた。これだと劇…

「A」「A2 完全版」

「A」1998 「A2 完全版」2002 監督:森達也 www.youtube.com www.youtube.com アマプラに入ってゐたので鑑賞。信者のみなさん結跏趺坐が上手。綺麗。映画を見て知れる限りヨーガの行法は一般的なもの、教義もよく聞く仏教・ヒンドゥー教世界のそれで…

「本居宣長」吉川幸次郎

「本居宣長」吉川幸次郎 筑摩書房 1977 また雨が降り始めた。ちかごろ週末雨が多い。洗濯物が部屋干しになるので困る。犬の散歩ができないのもつらい。午後から錦糸町オリナスとかいう複合商業施設で映画を見る。それから靴と帽子を買う予定。だから朝の…

「マヌ法典 ヒンドゥー教世界の原型」渡瀬信之

「マヌ法典 ヒンドゥー教世界の原型」渡瀬信之 1990 中公新書 ヒンドゥー教世界の原型は紀元前およそ六世紀頃から紀元前後にかけて練り上げられた。アーリア人の祖先たちがつくった伝統的かつ正統的な祭式中心の世界を担おうとするエリートバラモンたち…

「フリーソロ」

「フリーソロ」2018 アメリカ 監督:エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ、ジミー・チン 出演:アレックス・オノルド ほか www.youtube.com 「MERU/メルー」が面白かったので同じ監督の最新作「フリーソロ」を見てみた。こちらも素晴らしい。ラスト20…

「中国=文化と思想」林語堂

「中国=文化と思想」林語堂 訳:鋤柄治郎 講談社学術文庫 1997 四月はずっと体調が悪かった。年のせいか、季節の変わり目だからか、寒暖差が例年より大きかったためか、たぶん全部だろう。久しぶりに高麗人参濃縮エキスを買った。今日から毎日白湯に入…

「エスター」

「エスター」2009 アメリカ 監督:ジャウム・コレット=セラ 出演:ヴェラ・ファーミガ、ピーター・サースガード、イザベル・ファーマン ほか www.youtube.com 続篇「エスター ファースト・キル」の宇多丸さんの評論を聞いた。そのなかで一作目を絶賛さ…

「インド思想史 第2版」中村元

「インド思想史 第2版」中村元 岩波書店 1968 寒暖差が大きくてつらい。からだが弱いので体調がすぐれないのはいつものことだが、花粉が終って安心したところへこう暑いの寒いのがくるとたまらない。おかげでこの二週間ほど元気がない。おまけに岸田首相…

「海洋国家日本の構想」高坂正堯

「海洋国家日本の構想」高坂正堯 中公クラシックス 2008 本書に収められた論文が書かれたのは1963年から64年にかけてだから60年前ですか。いや凄い。深い学識、広い視野、大きな構想。なんて気持のいい文章だろう。丸谷才一がどこかで「偉い学者…

「古典について」吉川幸次郎

「古典について」吉川幸次郎 講談社学術文庫 2021 どういうわけか学生時代以来に中国熱が再燃してゐる。今年に入って吉川幸次郎の本をいくつか読んで、どれも本当に面白く、冗談抜きで全集を揃えたいと思うくらいだ。読みたい本、学びたいことが多くて困…

「対談 中国を考える」司馬遼太郎 陳舜臣

「対談 中国を考える」司馬遼太郎 陳舜臣 文春文庫 1983年 1974年から77年にかけての対談。司馬遼太郎が繰り返し(あるいは、執拗に、と言ったほうがよいか)日本人には普遍がわからない、普遍を中国に学ばないと日本は滅びるという意味のことを語…

「漢文の話」吉川幸次郎

「漢文の話」吉川幸次郎 ちくま学芸文庫 2006 中国の文章語(文言) 「論語」や「孟子」を読むことは「源氏物語」や「枕草子」を読むほどにはむつかしくない。なぜなら日本のいわゆる古文は当時における口語であるのに対し、中国のそれ、すなわち漢文は…

「災間の唄」小田嶋隆

「災間の唄」小田嶋隆 サイゾー 2020 小田嶋隆さんは昨年6月に65歳で亡くなった。もう1年近く経つけれどまだ受け入れられない。会ったことのない人の死がこれほど長期的にこたえるという経験は初めてかもしれない。そのことに驚いてゐる。 この10…

「インド美術」ヴィディヤ・デヘージア

「インド美術」ヴィディヤ・デヘージア 著、宮治昭・平岡三保子 訳 岩波書店2002 自分で簡単な年表をつくり、地図を横において、ゆっくり読んだ。最高に面白かった。再読三読すべき名著だと思う。時間をおいて読み返したい。 さきほど投稿した「日米地位協定…

「日米地位協定 在日米軍と「同盟」の70年」山本章子

「日米地位協定 在日米軍と「同盟」の70年」山本章子 中公新書 2019 苦しい読書だった。日本は本当にひどい国だなあと実感するのに加えて、自分がこうして勉強したところでなにがどうなるわけでもないという無力感が絶えずおそってきた。 さらに岸田首相…

「文化大革命と現代中国」安藤正士、太田勝洪、辻康吾

「文化大革命と現代中国」安藤正士、太田勝洪、辻康吾 岩波新書 1986 文化大革命とはなんだったのだろう。本を読むとなるほどこういう経緯からこういうことが起ったのかと順序や出来事は理解できるが、内在的な感覚、体感としてはもうまったく理解できな…

「プライベート・ライアン」

「プライベート・ライアン」1998 アメリカ 監督:スティーブン・スピルバーグ 出演:トム・ハンクス 、トム・サイズモア、マット・デイモン ほか www.youtube.com なぜだか分からないけれど長くて重厚な映画が見たい気分になって10数年ぶりに「プライ…

「毛沢東と周恩来」矢吹晋

「毛沢東と周恩来」矢吹晋 講談社現代新書 1991 毛沢東は湖南省の農民の子として生まれたが家系を遡ると明代の軍人にたどりつく。 毛沢東の先祖は毛太華という。朱元璋が明朝を建てたとき、江西省吉州府龍城県(現在の吉水県)から彼の部隊に身を投じた…

「一下級将校の見た帝国陸軍」山本七平

「一下級将校の見た帝国陸軍」山本七平 文春文庫 1987 昨今、戦前回帰とか新しい戦前という言葉が現在の政治状況に警鐘を鳴らすために使われる。なるほど第二次安倍政権からこっちの凄まじい劣化をみると確かに大日本帝国の末期はこんな感じだったのかも…

「砂漠と異人たち」宇野常寛

「砂漠と異人たち」宇野常寛 朝日新聞出版 2022 すてきな装丁。写真が下手ですみません 宇野さんの影響を受けて最近「ガンダム」を見てゐる。Amazonプライムに第一シリーズが入ってゐた。これまでテレビシリーズも映画もまったく見たことがなかった。こ…

「中国哲学」宇野哲人

「中国哲学」宇野哲人 講談社学術文庫 1992 周の衰微と諸子百家の登場 周の権力が強かった時代には新奇の言論をなすものを罰する「造言の刑」が行われてゐた。しかし衰微につれてこれがなくなり、諸子百家が自由勝手に自説を発表するようになった。 また…

「中国思想」宇野哲人

「中国思想」宇野哲人 講談社学術文庫 1980 君たる人は天の子である。万民は庶子である。 天の信仰は昔から現在まで政治・道徳・宗教等の根本思想になっている。それでまず天の意味を言わねばならぬ。天はただ有形の青空と見ることもあるが、しかしあの…