手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

本と映画-本

「インド文明の曙ーヴェーダとウパニシャッドー」辻直四郎

「インド文明の曙ーヴェーダとウパニシャッドー」辻直四郎 1967 岩波新書 面白かった。インド思想の勉強を楽しいと感じられるまでにけっこう時間がかかった。というのは、登場してくる神や概念がたくさんで、こんがらがって、よく分らないところがあるか…

たけくらべ

5月22日、土曜日、空には厚い雲。すごい湿気だけれど気温がさほど高くないので不快感はそれほどでもない。五反田まで歩き、山手線で日暮里まで行き、常磐線に乗り換えて南千住で下車。円通寺を目指して、南千住仲通りを歩く。 看板を見るとたくさんの商店…

「人間の解剖はサルの解剖のための鍵である」吉川浩満

「人間の解剖はサルの解剖のための鍵である」吉川浩満 河出書房新社 2018 前世紀後半から急速に発展してきた進化と認知に関する諸科学、すなわち認知心理学、行動経済学、人工知能研究の成果を紹介し、現在生じてゐる人間観の変容に関する調査報告を行う…

「多重都市デリー 民族、宗教と政治権力」荒松雄

「多重都市デリー 民族、宗教と政治権力」荒松雄 1993 中公新書 すごい湿気だ、頭が痛い。ノートをば。 デリーは四つの区画に分けるのが便利 19頁 1、旧シャージャハーナーバード。ムガル五代皇帝シャー・ジャハーン(在位1626~58)が造営した…

「新宗教を問う 近代日本人と救いの信仰」島薗進

「新宗教を問う 近代日本人と救いの信仰」島薗進 2020 ちくま新書 日本人の宗教意識の変遷について知りたいと思って読んだ。面白かった。こんなふうに手頃なサイズで全体像を提示してくれる本というのは本当にありがたい。感謝です。創価学会、大本、天…

運命

5月5日、水曜日、大型連休最終日、毎日けっこう歩いてゐるのでいいかげん疲れてきたけれど、まだまだ歩く。五反田まで歩き、山手線で目白まで行く。目白通りを歩いて明治通りまで来たら左に折れ、少し進むと右手に鬼子母神が見える。参道も境内も気持がい…

連環記

5月4日、火曜日、上野公園を歩く。気温は25℃に達し、かなり暑い。公園を入るとすぐに西郷隆盛像、少し奥に彰義隊の墓がある。 ここは江戸が薩長に敗れた場所だ。 こういう場所で幸田露伴を読むと、とても自然に作品の世界に入っていける。東照宮、五重塔…

蒲生氏郷

5月3日、日曜日、もう少し谷中を歩きたいと思い、再び北へ。二日前は日暮里で降りたが、今回はひとつ手前の鶯谷で下車する。言問い通りを歩いていくと、左手に寛永寺が見える。江戸の霊性の中心である。 寛永寺 根本中堂 雨が降ってきたので寛永寺事務所に…

五重塔

4月30日、金曜日、午前中に仕事を終え、日暮里に向った。目的は谷中を歩き、そこで幸田露伴の「五重塔」を読むことである。山手線日暮里駅に降りるのは初めてのことだ。改札を出て案内に沿って歩くと、すぐに谷中霊園に出た。墓地だけに静かで落ち着いた…

「身ぶりと言葉」アンドレ ルロワ=グーラン

「身ぶりと言葉」アンドレ ルロワ=グーラン ちくま学芸文庫 2012 600頁を超える大著であり、またかなり読みにくい文体なので、読了に相当な時間がかかった。こんなに難儀して読んだ本は久しぶりだ。ぼくの学力不足が一番だろうけれど、どうも原文そ…

「東京裏返し 社会学的街歩きガイド」吉見俊哉

「東京裏返し 社会学的街歩きガイド」吉見俊哉 集英社新書 2020 先日、友人と上野でランチをし、帰りに少しだけアメ横と上野公園を歩いた。そのとき「上野ってかなり面白いところなのでは?」という感触があり、上野近辺のことを知りたくなった。そうし…

「漢字世界の地平 私たちにとって文字とは何か」齋藤希史

「漢字世界の地平 私たちにとって文字とは何か」齋藤希史 新潮選書 2014 今年読んだ本の中でいちばん面白かった。音声言語と文字言語(書記言語)の関係について、これほど原理的で射程の広い議論を読んだことがない。これはかなり凄い本なのでは? 衝撃…

「漢文脈と近代日本」齋藤希史

「漢文脈と近代日本」齋藤希史 NHKブックス 2007 いろいろと蒙を啓かれた。感動した。 著者によれば、日本の知識階層のうちに素養としての漢文が定着したのは近世以降のことらしい。特に重要な契機となったのは松平定信による「寛政の改革」と、頼山陽の…

「ヒンドゥー教10講」赤松明彦

「ヒンドゥー教10講」赤松明彦 岩波新書 2021 図書館で借りてきて、ちょっと読んで、これは買うべき本だと思い直し、すぐに購入した。勉強になった。いよいよ面白くなってきた。 ノートをば。 ・「ヒンドゥー」という語は古代イラン語に最初に現れる。…

「白川静 漢字の世界観」松岡正剛

「白川静 漢字の世界観」松岡正剛 平凡社新書 2008 「興」という概念についての記述がとても刺激的だった。 「興」とは「失われた世界観にひそむなにがしかの部分の律動を、メタフォリカルに取り出し、記憶再生を試みる手法」をいう。ここで「失われた世…

「盲獣・陰獣」江戸川乱歩

「盲獣・陰獣」江戸川乱歩 河出文庫 2018 「めくら」「気違い」「女の腐ったような(ひどいな)」など、今だと炎上間違いなしの表現が盛りだくさんだ。ぼくは古い言葉が好きなので、ああ面白いなあと思って読んだけれど。 乱歩の「下品な品の良さ」みた…

「インド史」山本達郎 編

「インド史」山本達郎 編 山川出版社 1960 もう図書館に返さねばならない。読了までかなり時間が掛かった。中世まではすごく面白く読めたけれど、イギリス支配以降はしんどくてほとんど頭に入ってこなかった。記述が細かすぎる。このレベルの詳細な記述…

「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」峰宗太郎 山中浩之

「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」峰宗太郎 山中浩之 日経プレミアシリーズ新書 2020 すごく勉強になった。バランスの取れた良書だと思う。そもそも新型コロナウルスとはどんなものなのか、免疫系の仕組、ワクチンの種類・リスク、PCR…

「幼年期の終わり」アーサー・C・クラーク

「幼年期の終わり」アーサー・C・クラーク 1952 光文社古典新訳文庫 2007 訳:池田真紀子 ぼくは宇宙人とか、地球外生命体とか、群体知能とか、人類より高次の存在とか、その種のものを全て信じてゐるので、この小説で書かれてあることがそのまま起…

「光と風と夢」「北方行」等 中島敦

「中島敦全集 1」「中島敦全集 3」中島敦 ちくま文庫 1993 中島敦の主要作品は「ちくま日本文学」シリーズの12巻に収録されてゐる。ぼくはその中島敦選集が好きで、たぶん3回くらい通読してゐる。漢文調の文体、高い倫理観、気品のある詩情、異国情…

「ガンディー 平和を紡ぐ人」竹中千春

「ガンディー 平和を紡ぐ人」竹中千春 岩波新書 2018 ガンディーの評伝。読み終えて、世界は複雑だ、というどうしようもない凡庸な感想をもった。最近そういうことばかり考える。人間・歴史・宗教・国家などについて考えると、あまりに多面的かつ多層的…

「『コーラン』を読む」井筒俊彦

「『コーラン』を読む」井筒俊彦 岩波現代文庫 2013 原著は1983年刊行 花粉と低気圧のダブルパンチでひどい倦怠感だ。こんなふうに頭ぼんやり且つ無気力な状態で一日を過ごすことも、イスラーム的に考えれば、神が望まれたこと、ということになるの…

「海辺のカフカ」村上春樹

「海辺のカフカ〈上〉〈下〉」村上春樹 新潮社 2002 十数年ぶりに再読。村上春樹の長編を読むといつも、世界の成り立ちってほんとうはこういうものなんだろうな、という気持ちになる。 「こちらの世界」と「あちらの世界」がある。ぼくたちは二つが重な…

「これからのエリック・ホッファーのために」荒木優太

「これからのエリック・ホッファーのために」荒木優太 東京書籍 2016 通読はしんどそうだったので、食指が動いた人物の頁だけ拾い読みした。そういう読書があってもいい。 仕事をしながら舞踊探求を続けてゐるぼくにとってたいへん勇気づけられる内容だ…

「愛するということ」エーリッヒ・フロム

「愛するということ」エーリッヒ・フロム 鈴木晶=訳 紀伊國屋書店 2020 原著は1956年刊行の「The Art of Loving(愛の技術)」。 素晴らしい本だった。人間にとっていちばん大切なことが書かれてある。ときどき読み返して反芻する必要があるから、…

「心を病んだらいけないの? うつ病社会の処方箋」斎藤環 與那覇潤

「心を病んだらいけないの? うつ病社会の処方箋」斎藤環 與那覇潤 新潮選書 2020 豊かな対話。いまの日本社会について、そのなかで生きることについて、関係するあらゆる話題を縦横無尽に語ってゐる。誰が読んでも面白く、タメになる本だと思う。 ぼくがい…

「完本 小林一茶」井上ひさし

「完本 小林一茶」井上ひさし 中公文庫 2020 (初演は1979年) 面白い! 面白い! 面白い! 再演したら見に行きたい!!! 最高すぎた。ほんとうに、井上ひさしはバケモノだ。 いくらなんでも勉強しすぎだし、趣向をもりこみすぎだし、ことばが豊穣…

「不寛容論 アメリカが生んだ「共存」の哲学」森本あんり

「不寛容論 アメリカが生んだ「共存」の哲学」森本あんり 新潮選書 2020 アメリカ初期の入植者ロジャー・ウィリアムズ(1603頃-1683)の半生を辿りつつその寛容論を紹介する。それは「評価しないけれど受け入れる」「嫌いだけれど共存する」と…

「そのうちなんとかなるだろう」内田樹

「そのうちなんとかなるだろう」内田樹 2019 マガジンハウス 内田樹先生の自叙伝。 「師弟システムのダークサイド」についての記述、ほんとうにそうだと思った。ぼくは稽古事が好きでいろんな先生についてきたけれど、弟子の成長を阻害する指導者ってけ…

「ツイッター哲学 別のしかたで」千葉雅也

「ツイッター哲学 別のしかたで」千葉雅也 2020 河出文庫 千葉雅也さんのツイート集。いいな。有限性の哲学。「切断」という概念が頭から離れないや。千葉さんの第一小説「デッドライン」を読むと決めた。 以下、気に入ったツイートをメモ。 ニーチェの…