手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

「ツイッター哲学 別のしかたで」千葉雅也

ツイッター哲学 別のしかたで」千葉雅也 2020 河出文庫

千葉雅也さんのツイート集。いいな。有限性の哲学。「切断」という概念が頭から離れないや。千葉さんの第一小説「デッドライン」を読むと決めた。

以下、気に入ったツイートをメモ。

ニーチェの「とにかく寝ろ」

それにしても昨日はたっぷり寝たので、そのおかげで今日はすっきりしていたように思います。やはり疲れたなと思ったらとにかく寝るのがいいんですね。ニーチェもそう言ってるよね。ニーチェの「とにかく寝ろ」っていうのは、すごく切実なメッセージであると思う。 [2011-06-13]

すぐ分解

困ったこと、気乗りしないことは対処可能な細かいアクションにすぐ分解すること。 [2012-05-26]

有限性によって

しかし僕は怠惰であると悪びれもせずに言おう。もちろんベストというよりもベターエフォートでがんばってはいる。しかしそれも有限である。そうした有限性によって、物事があるしかたで塑形されてしまうことにむしろ創造性を見出すことも、必要であると思う。 [2010-06-18]

普及させる努力

現状で普及していない何事かを普及させようと努力する立場ならば、「自分は正しい」と思っているにしても、どういう批判や皮肉のスタイルを採れば現状の「ハッキング」に(確率的に)成功し(やすくなり)、どういうスタイルではマズイのかを熟慮しなければならないと思うのよね。ツラいけど。 [2012-12-12]

偉そうな本

蓮見重彦の伝説の言葉「私を偉そうと言う人がいますが、偉そうなのではなく、偉いのです」における「偉い」というのは、承認欲求のみみっちい競争をやめて、非意味的切断で勝手なことをやるということです。 [2013-12-28]

即興

ナルシズムを高レベルに発揮してパフォーマンスできるタイプの人間に対しては必ず、ひがみとか妬みまじりの罵倒が向けられる。そういう人たちに対しては、恍惚を発揮することは「技術的にエクササイズ可能」であると言いたい。「狂ってしまって平気」のオンオフの練習ができるということだ。 [2014-03-05]

最大の課題

キリスト教の根源から考えても、人間文化にとって最大の課題とは、四方八方から責め立ててくる「恥ずかしさ」と戦い、恥ずかしさを非意味的に切断するということではないだろうか。 [2014-03-06]

人生でどういう可能性を採れるかの範囲は、しばしば、何を恥ずかしいと思うか、何が自分の尊厳に抵触するか、という基準で塑形される。だが、恥と尊厳の構造は変えられる。それによって可能性の範囲が変わる。恥知らずになればいいと言いたいのではない。恥と尊厳の「一定の」構造を別のしかたにする。 [2015-02-06]

その構造をよく分析できていない自分の尊厳をこれまでそうだったからという理由で維持すればいいというものではない。自分の尊厳を(どうやっても不完全にしかできないにしても)分析してみること。「尊厳の可塑性」を考えてみること。 [2015-02-06]

男たちよ

誰かの美しさに魅了され恋さえしているときに君、男たちよ、自分自身の美しさをはっきり認識することの奇妙な恐ろしさから、他人に恋することで逃れようとしているのではないかと考えてみたまえ、そう、自分自身こそ法外に美しいかもしれないのだ。  [2013-10-31]

哲学

パリで気胸になって入院したとき、隣のベッドのおじさんは人工肛門の手術をしたばかりとのことで、辛そうに唸っていた。君はフランスで何をしてるんだいと訊かれたので、哲学の勉強ですと答えると、おじさんは、そうか哲学か! ・・・・・いいかい、真に恐ろしいことは死ではない、それは苦痛だよ、と言った。  [2014-01-18]