手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

「奇跡の投手人生 50の告白」山本昌

奇跡の投手人生 50の告白山本昌 2015 ベースボールマガジン社

YouTubeチャンネル「フルタの方程式」が好きでよく見てゐる。90年代はそこそこ野球を見てゐたので、古田さん世代の人が楽しく話してゐるのを見るのはとても愉快だ。

選手としての成績と言語運用能力にはなにか関係があるのだろうか。出てくる人達、みんな話が上手でおもしろい。野球がとりわけ知的なスポーツということなのか。

「フルタの方程式」で山本昌さんのファンになった。あの頃、奈良の少年達のなかで中日はそんなに人気のある球団ではなかった。山本昌さんも、たいへん失礼だけれど、イヤなピッチャーだなあ、みたいな印象だったような気がする。実際イヤなピッチャーだから219勝(!)も出来たのだろうけれど。

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山本昌さんの語り口、声の質、調子、なんとも心地よい。どこかで聞いたことがあると思ってしばらく考えて、ア、気が付いた。寅さんだ。車寅次郎。あの話芸に似てゐる。よく見ると、なんだか顔も、渥美清に似てゐるようだ。骨格が近いと声の質も似て来るのだろうか。ほんとうにいい声だ。

デーブ大久保さんのチャンネルでの語りのほうがひとりゲストだからのびのび喋って名調子。

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www.youtube.com(☝寅さんムチャクチャやね笑)本にも書かれてゐるけれど、ぼくが好きなのは、フロリダ留学時代にマイナーリーグのまったく無名のスパグニューロという野手から、後に山本さんの決め球となるスクリューを習った話。

ピッチャーはプライドが高いからふつう野手に変化球を習ったりしない。でも山本さんは気にしなかった。スパグニューロがキャッチボール中に見事な変化球を投げてゐたから投げ方を聞いた。言われた通りに投げてみたらきれいに曲がった。

そのスパグニューロは活躍できず、同じ年に解雇された。つまりスパグニューロは残念ながらやはり選手としては一流ではなかったわけだ。彼は野球人生のあるタイミングでたまたま山本さんに出会い、遊びで投げてゐたスクリューを教えた。山本さんは後に200勝投手となった。

なにかピタっとはまったものがあったんだな、二人の野球人生が交差するそのときに。

☟の動画で語られてゐる。

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あとラジコンの話も面白い。二年連続を最多勝をとったあと、ラジコンにはまった。ラジコン少年達はコースを走らせる度に気温やら湿度やらの記録をとり、マシンをいちいち解体してセッティングを変える。そういうことにやたら時間をつかうので、一日サーキットにゐても5,6回しか走らせない。回数は少ないが、その分析と修正のおかげで帰りには必ずタイムがあがってゐる。

「あれ見たときに、こいつらスゲーなと思った」

セッティングを変えることであれだけタイムが向上するのだから、最多勝をとったいまの自分のフォームがいちばんいいとは限らないではないか。ラジコンをやりだして、変えることが怖くなくなった。マシンのセッティングを変えるように自分のフォームを変えてもいいわけだ。そう考えて、身体のメカニズムを勉強するようになった。そのことが50歳までの現役生活につながった。

☟の動画で語られてゐる。

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本にはいろいろなエピソードが書かれてゐるけれど、スクリュー話とラジコン話がとくに興味深く感じたので、動画と共にここにメモしておいた。いろいろ考える。

人生の不思議さ、素直であること、直感に従うこと、勉強すること。継続すること。