手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

「リズムの本質について」ルートヴィッヒ・クラーゲス

リズムの本質について」ルートヴィッヒ・クラーゲス うぶすな書院 2011  

原著は1933年に刊行。リズムを拍子(タクト)と対立的に論じることで、その本質を浮かび上がらせる。

われわれの考察は振り子時計の拍子(タクト)を打ちながらの歩みの現象と波の現象との本質的相違に迫ろうとするものである。 23頁

クラーゲスが提出する二項対立はおおよそ以下のとおり。

リズム          拍子(タクト)

生命           精神

生命現象         人間の作業

無意識          意識

分極した連続性      分割・規則・系列

類似のものの回帰     境界づけ(感知界を精神に同化すること)

更新           反復

波            メトロノームのチクタク

無限のもの        始まりと終わりがある

リズムは現象の時間性のみならず空間性をも支配してゐる。時間のリズム的分節化はそのまま空間性の分節化であり、逆もまた同じである。音の世界は力動的な世界である。人間は音を聞き取るとき、それが現象する空間そのものに気づいてゐる。音と運動とは強い引力で結びついてゐる。音と響きとは動かされたものであり、また動かすものであり、したがって運動の舞台である空間を現象させる。

(・・・)したがって響きのリズムは時間現象を分節化するばかりでなく、それを超えてさらに生命現象をも分節化するのである。というのも、響きのリズムが空間現象を生命的威力の交代運動で満たすからである。 63-63頁

リズムとは分極した連続性である。上昇と下降に代表される二つの相反する運動が並存しつつ交代する。新しいものが生じるとき、更新されるべきものは滅びる。

夜と昼、満ち潮と引き潮、凋落と成長、生と死。このリズム的交代に分極した宇宙的生気を見出すことができる。またそれは、受け取りと手放し、出会いと別れといった人生の免れがたい交代をも支配するものである。

リズムと拍子は対立してゐるが、その本質的相違にもかかわらず、これが同居し、融合する場合がある。拍子によって、リズムの作用が強まることがある。ここに音楽の秘密がある。硬いものを食べることで顎が強くなるように、負荷・妨害があることによって生命過程が強化されるということがある。

音楽における拍子は、リズムを保つための秩序を生み出すものであると同時に、リズムを抑制し、その行く手を阻むものでもある。そのような性質が、逆にリズム的振動を強化する。

人間は精神の担い手であると同時に生命の担い手である。生命は個体を超えたものであり、ただ個体に貸し与えられてゐるだけである。生命を個体に閉じ込めてゐる力が精神である。

生命の拍動を抑制してゐる精神の枠が一時的に取り払われ、生命それ自体が優勢となるにつれて、その過程や形をリズム化する。それは抑制的感情からの自由と解放である。個体生命はここにおいて、いまここの肉体的な境界を打ち破り、生命の世界と融合する。

 (・・・)個体心情がリズムの中で振動すると、たとえどんなに短い瞬間であろうとも、生起の双極を結合しているものつまり過ぎ去りと生成とを結合する永遠と一つになるのである。 100頁