すごい労作。著者の浅原昌明という方、略歴によれば会社員としてインドに赴任してゐたときに細密画に魅了され、働きながら研究を続けたとのこと。それがこの大著につながったのだからすごいですね。勇気付けられます。
上巻の冒頭にインドの神話と文学の概説がある。
「ラーマーヤナ」
「バーガヴァタ・プラーナ」
「ギータ・ゴーンヴィダ」
これら物語についての解説がとてもよかった。
「ラーマーヤナ」はヴァールミーキ作、紀元2世紀頃に成立。ラーマ王子が、妃シーターをランカ(今のスリランカ)へ連れ去った魔王ラーヴァナと戦い、猿王スグリーヴァの助けを得て妃を取り戻す物語。
「バーガヴァタ・プラーナ」は10世紀頃に成立したクリシュナ神信仰文学の代表作で、ヒンドゥー教ヴィシュヌ派の聖典「プラーナ文献」のうちの一つ。ヴィシュヌ神の化身としてのクリシュナの生涯を詳細に述べたもの。
「ギータ・ゴーンヴィダ」は12世紀頃成立、ベンガル地方の熱心なヴィシュヌ信仰者であったジャヤデーヴァの作。牛飼いのクリシュナ神とその妻ラーダーの恋愛物語。二人の関係は神と人間との関係を暗示してをり、熱烈なヴィシュヌ神信仰を歌ったもの。
本書の要約を読んで、ようやくこれら物語の大枠が頭に入ったような気がする。
いい感じだ。というのは、物語を感じながら美しい細密画を見てゐると、ラーダーに自己を移入させてクリシュナを希求するというヴィシュヌ信仰のありかたがちょっとわかった気がしたから。一心にクリシュナを求めるという自己放棄と没入感、devotion というのかな。
そろそろ概略的なものではなく、神話全体を読むという段階にすすめそうだ。
☟は便利なので📷