手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

「タゴール・ソングス」

タゴール・ソングス」2019 日本 監督:佐々木美佳

予告編はこちら☟

公式サイトはこちら☟

いま、仮設の映画館☟で見ることができます。

☟に監督インタビューが。

とてもいい映画でした。

なにがいいって歌が!

とにかく、歌がいい!!

でも映画だから、歌がいいだけぢゃなくて、歌とともに生きる人の姿が美しい。

歌がよくて、歌に励まされて生きる人の姿がよくて、歌と人間との関係、詩と人間との関係が、インドの街並み、自然とともにゆっくりと描きだされていくのが、なんともじーんときた。

音楽ドキュメンタリーということで「シュガーマン 奇跡に愛された男」を思い出した。

あれも歌とともに生きる人々を描いたすごい作品だった。

タゴール・ソングス」を見た人は、ぜったい、みんな「ひとりで進め」を好きになるはず。

どんな人でも「ひとりで進め」と自分に言い聞かせて、勇気をふりしぼって、歩いていかねばならないときがあるはずだから。

コロナ禍の苦しい状況において、多くの人にとって、それは「今」かもしれない。

「ひとりで進め」の歌詞を、映画冒頭の字幕から書き起こす。

もし 君の呼び声に誰も答えなくとも ひとりで進め

ひとりで進め

もし 君の呼び声に誰も答えなくとも ひとりで進め

もし 誰もが口を閉ざすなら

もし 誰もが口を閉ざすなら

もし 誰もが顔をそむけ 恐れるなら

もし 誰もが顔をそむけ 恐れるなら

それでも君は心開いて 心からの言葉をひとり語れ

心からの言葉をひとり語れ

もし 君の呼び声に誰も答えなくとも ひとりで進め

ひとりで進め

もし 君の呼び声に誰も答えなくとも ひとりで進め

ひとりで進め

もし みなが引き返すのなら ああ みなが引き返すのなら

もし 君が険しい道を進む時 誰も振り返らないのなら

もし 君が険しい道を進む時 誰も振り返らないのなら

いばらの道を 君は血にまみれた足で踏みしめて進め

いばらの道を 君は血にまみれた足で踏みしめて進め

もし 君の呼び声に誰も答えなくとも ひとりで進め

ひとりで進め

もし 君の呼び声に誰も答えなくとも ひとりで進め

ひとりで進め

もし 光が差し込まないのなら 光が差し込まないのなら

もし 夜の嵐に扉を閉ざすなら もし 夜の嵐に扉を閉ざすなら

それでも君はひとり 雷であばら骨を燃やし続けろ

こうして書き起こして思ったのですけど、ほんとにいい歌ですね。

この映画に出てくる「タゴール・ソング」の数々はいわゆる「捨て曲なし」というやつで、ほんとにみんないい歌すぎてどうしようという感じ。

予告編にも登場するストリートラッパーにはぶっとんだ。あまりにカッコイイので巻き戻して何度も見た。

あれは最高。

終わりの始まり 始まりの終わり おれの話を聞きたい?

それじゃ行くぜ

俺が生きてるこの国 政治は終わってるぜ

俺らがラップを通して この国の政治的汚職を廃止してやる

俺たちの次世代のために

政治家は甘いことばかり語って 俺たちに夢を見させるが

世の中良くなってるように思えるか?

コルカタは俺の街 ここに生まれて20年

いろんなことを体験しながら いろんなことを見てきたぜ

皆がよく知る Wikiで「KOLKATA」

ヴィクトリアにハウラー橋 シアルダからダクリアまで

けど お前ら知ってるか?

今も飢えた子どもたちが お腹を空かせて泣いてんだ!

それからナイーム・イスラムさんという高校生が歌う「赤土の道」にも泣かされた。

これもいい歌だ。

この歌のかなしい旋律に、どこか沖縄音楽に近い響きを感じとったのはぼくだけだろうか?

村を旅立ち 赤土の道を進む

私の心が惹かれる方へ

村を旅立ち 赤土の道を進む

私の心が惹かれる方へ

私の心を呼び寄せる声のほうへ

土埃の中を進んでいく 私の心が惹かれる方へ

村を旅立ち 赤土の道を進む

私の心が惹かれる方へ

道を進む最中で どんな富を目にするのか

どんな苦難が立ちはだかっているのか

道を進む最中で どんな富を目にするのか

どんな苦難が立ちはだかっているのか

何処で最期を迎えるのか

考えても分からない 私の心が惹かれる方へ

村を旅立ち 赤土の道を進む

私の心が惹かれる方へ

私の心が惹かれる方へ

いま彼の熱唱を聞きながら書き起こしたのですが、ほんとうにいい歌ですね。

こうして聞きなおしてゐると止まらない。

どうしよう。

あと大学生の女の子たちが「私はチットランゴダ」を歌う場面なんか感涙だった。

「本当の愛とは苦難の時にともにあるということよ。今は人の本質が分からなくなった」

私はチットランゴダ

私は王の娘 女神ではない ただの女でもない

私はチットランゴダ

崇められる神ではない 疎まれる者でもない

もし あなたが私の苦難に寄り添うなら

もし 私もあなたと苦難を共にできるなら

そうすれば 私のことが分かるでしょう

でも それはあなたが決めること

私はチットランゴダ

私は王の娘

私はチットランゴダ

私は王の娘

これを歌って学生達が人間の自尊心について語り合う。

「私は敬われたくもないし、蔑まれたくもない。ただ共に歩んでいきたい」

この映画に出て来る人々、みんなとっても懸命に、誠実に生きてゐる。

彼らが歌と人生について語る言葉もまた詩のように輝いてゐた。

誠実に生きる人間の姿って、ああいいなあ、という気持ちです。