基礎知識は「コトバンクのインド舞踊」「コトバンクのカタック」「Wikipedia のカタック項」をば。レパートリーと用語集は「「ang kavya」の附録 」に。
カタックはムガル帝国時代に原型が形成されたヒンドゥーとイスラームの習合藝術である。それが大英帝国支配時代の低迷を経て、19世紀後半の民族的自覚の高まりとともに再興し、洗練の度を深め、20世紀に至り藝術的完成をみた。
その歴史的経緯から、カタックの「リズム」と「かたち」には、ヒンドゥーの霊性とイスラームの霊性が顕現してゐると言い得る。具体的にどこにどうあらわれてゐるか、どのように混じり合ってゐるかに関心がある。
舞踊の「リズム」と「かたち」が意味なくそのまま提示されればヌリッタ(抽象舞踊)となり、だれかを演じたりなにかを示したりするとヌリティヤ(具象舞踊)となる。霊性にいたるふたつの回路である。
カタックはイスラームの影響(偶像崇拝の禁止)を強く受けた北インドの舞踊であるゆえに、ヌリッタ(抽象舞踊)が、他のインド舞踊と比べて突出して発達した。ムガル美術で有名な線の美しさ、そして複雑極まるリズム構築は荘厳である。
また、ヴェーダの時代以来の神話及び伝説を主題にしたヌリティヤ(具象舞踊)も魅力的だ。カタックではクリシュナが特に重要だが、クリシュナに限らずシヴァでもガネーシャでも、インドでは神々が愛され、親しまれてゐる。いったい彼らは何を見て、何を得てゐるのだろうか。
ヌリッタもヌリティヤも掘り下げればきりがない。わたしが望むのは全体を知ることである。だから常に全体感ということを意識して探求を進めたい。積み重ね、どこかの段階でまとまった文章を書く。そのための資料集である。