「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」2017
監督:クレイグ・ガレスピー 出演:マーゴット・ロビー、セバスチャン・スタン
ものすごく残酷で悲惨で、人間の下劣な面を存分に見せてくれる映画なのだけれど、マーゴット・ロビー演じるトーニャ・ハーディングにどこか愛嬌があって、何よりもエネルギーがすごいから、変だなあ、なんか元気がでてきた、というのが鑑賞後の感想だ。
貧しい労働者階級の育ちで、親は完全なDV。
そういう環境だから、トーニャ自身も品がなく粗野で教養がない。
コミュニケーションが基本的に暴力的だ。
殴りあったりセックスしたりしてコミュニケーションをとってゐる。
ああ、そうだよなあ、そういう風になるよなあ、と思う。
こういう環境だとこうなるよね。で、才能があったら這い上がるためにスケートに賭けるよね。
ああいう男を選ぶことになるよね。ああいう男はああいうことするよね。
そしたら、マスコミって書きたてるし、大衆は喜ぶよね。
ああいう状態で試合にのぞんだら、ああいう結果になるよね・・・
そう考えると人の運命ってなんなのかな、などと深淵な問いの前にたたされる。
けれど、トーニャが泣いたり喚いたり、滑ったり飛んだりする獣のような姿に、エって、いうくらいの凄い力を見せられて、何か崇高さともいえるようなものを感じるのだ。
マーゴット・ロビーは綺麗で華やかな人だけれど、ほんとうに汚く、泥臭く、そしてかわいらしく、またイノシシみたいにパワフルなトーニャを見事に演じてゐる。
渾身にして入魂の名演ではないでしょうか。
堪能いたしました!