「わたしは、ダニエル・ブレイク」2016
監督:ケン・ローチ 出演:デイブ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズ
ドシンときた。
今ぼくらが生きてゐる世界、社会、システムに対する怒り、義憤が伝わってくる。
うまいこと適応してるつもりの小利口で軽薄な連中は「義憤」なんてものを嘲笑するだろう。
耐え難いことだ。
現在のシステムは、貧しい人々に屈辱を与え、尊厳をおしつぶし、みじめな思いをさせてゐる。
この映画の主題は、主人公ダニエル・ブレイクの次のセリフに尽くされるだろう。
When you lose your self-respect….you’re done for.
自尊心を失ったら、人間おしまいだ。
劇中、
「miserable」みじめ
「humiritate」屈辱を与える
「self-respect」自尊心
といったことばが繰り返しでてくる。
システムが、人々に屈辱を与え、自尊心を破壊し、みじめな気持ちにさせる。
権力と金力をもち、そのようなシステムから受益する人がゐる。
システムに適応して、うまいことやってるしょ~と「いいね!」を求める人がゐる。
みじめなのは自分のせいだよ、努力しなよ、自己責任だ、と吐き捨てる人がゐる。
悲惨だ。
ぼくらの生きてゐる世界は、ほんとうに悲惨だ。
いちばん悲惨なのは、侮辱されても屈辱を感じない人たち。
侮辱されても屈辱だと思わない、怒らない。
というのは、もう自尊心を失ってしまったからなんだ。
これを卑屈という。
いや、失ったのではなく、敬意をもって対されたことがないから、そもそも自尊心というものがわからない人だってゐる。
これを奴隷という。
「生きてゐたければ卑屈/奴隷であれ」
ぼくたちはそういう社会をつくってないか?
ほうれ、媚びてごらん、媚びたら金をやるよ。地位をやるよ、権力をやるよ。
そんな態度をとって平気な人間がゐる。
そういう人間は、クズと言っていいだろうさ。
そういうクズが民主的な手続きによって宰相になったりするから、人間というのはまったく業が深い。