「となりのイスラム」2016 ミシマ社
すごくよい本。
イスラームって何?どんなの?内戦とかテロとか多すぎぢゃない?と思ったら、まづこれを、とすすめたい。
読みやすくて、先生が体験したトルコやシリアでのエピソードは愉快で、また奥深いものばかり。
面白くよめて、読後にはきっとイスラームに対する親しみがわき、もっと深く知りたいと思うようになる。
中東で起こってゐることは、もう大変で、何がなんやらさっぱりで、テロが起こると「怖い」という気持ちが出るのは当然だけれど、「怖い」に安住してしまってはいけないのだ。
なぜ「怖い」と思うのか。なぜ彼らが「テロ」をするような状況になってゐるのか。
それを知らねばならない。
本書を読めば、「怖い」が極めて一面的なイスラーム理解(というかプロパガンダ)に基づくものであることが分かる。そうして、きっとイスラームを好きになる。
別に好きになる必要はないのかも知れないけれど、ぼくは大好きだ。
イスラームの世界観、人間観がすごく好きだ。
イスラム教徒と三十数年つきあってきましたが、イスラムの本質というのは、教科書的な説明の中にあるのではなく、「儲かったときには自分の才能で儲けたなどと思うな」というように人間のおごりをいましめ、弱い立場の人を助けるところにあるように私は思います。 68頁
イスラームは「人間のおごりをいましめる」ように体系化されてゐる。
そこが素晴らしいと思う。これは厳しいのではく、慈悲だ。
おごりは人間を不幸にするから。
だからイスラームは偶像崇拝を禁止する。アッラーだけを崇敬せよという。弱いものを助けよという。
人間がおもいあがって、だれかを支配したり、だれかに隷属したりしないようにするための命令だ。
ぼくはそこに慈悲を感じる。
これは良書なので、是非、多くの人に読んでほしい。