これは良書だ。読んでよかった。こういう本が読みたかった。
「大東亜戦争を全肯定する歴史修正主義者」が近年増えてゐる印象があるが、どうしてこんなことになってしまったのか。そういう人は決まって「保守」を自称してゐるが、「保守」ってそういうことなのか、と疑問に思ってゐた。
その疑問をこの本は見事に解消してくれた。
いやあ、いいものを読んだ。
ぼくは中島さんのファンである。
ぼくが敬愛する福田恒存を、中島さんはその著書のなかでしばしば引用される。
単純に、そういうのがうれしくて親しみを感じてゐる。中島さんが提唱される「リベラル保守」という立場にも共感する。
現在の言論状況を見る限り、「保守」と「右派」がおんなじくくりで、その反対が「リベル」「左派」みたいなことになってゐる。
両陣営がレッテルを貼りあって、批判しやすい枠内に押し込めようと躍起になってゐる感じだ。
こういう硬直した枠組みを解体して、言論空間をもっと建設的で健全な場にしようというのが、中島さんが取り組んでゐる仕事の一つだと思う。
応援したいし、これからも可能な限り著書を読みたいと思う。
この本で、中島さんは二〇歳以上で大東亜戦争を経験し、戦後の保守論客として活躍した戦中派の作家達の記録や回想を読み込み、彼らの思考・論理を丁寧に紹介してゆく。
その筆致から高い倫理観と誠実な知性が感じられる。
読み手への敬意が伝わってくる。
自分より一回り年上の、まだ若い、これから大きな仕事をしてくれるであろう、信頼でき尊敬できる学者。そういう人がゐるというのはたいへん嬉しいことだ。
「自分の頭で考えろ」とは言うけれど、実際、ゼロからは考えられないわけで、また人それぞれ知力にも限界がある。
だから「この人なら信用できる」と思った人の意見を聞くし、本を読む。そういうものだろう。
ぼくは中島さんを信用する。