「街場の平成論」2019 晶文社
「頭の丈夫な人(まえがきによる)」たち9人の平成論を収める。
内田先生は「戦後史五段階区分説」を説く。
ウチダ本の読者にとってはある程度「いつもの話」だけれど、それが読みたく買ってゐるのである。大事な話だから。
ポツダム宣言では「日本に戦争遂行能力がある限り駐留する」とされた米軍は、安保条約では「日本に戦争遂行能力がない以上駐留する」ことになった。つまり、日本に戦争遂行能力があろうとなかろうと米軍は日本に駐留し続けるということがここに宣言されたのである。
問題は、この米軍の半永久的な駐留は日本が「希望」したことで実現したという話になっていることである。米軍が日本国内に駐留するのは日本の国家主権の「制限」ではなく、日本の国家主権の「発動」であるという、これ以後日米関係を貫く倒錯的なレトリックがこのときに構築されたのである。
これだよ。とにかくこれをなんとかしなきゃどうにもならないんだ。
白井聡さんの論考もおもしろかった。
小田島隆さんのもいつもながら、最高。
今回、いちばん沁みたのは最後、鷲田清一さんの寄稿「小さな肯定」。
なんて素敵な文章なんだろう。感動しちゃった。けっこうむづかしい哲学的な議論をしてゐると思うんだけど、そこに読者をひきこむ手管がすごく自然だ。
なんとなく話をききはじめたら、しらないあいだに高度に抽象的な議論にはいってゐて、そうして頭がときほぐされて、読み終えたときには世界の見え方が変わってゐる。
そんな感じ。静謐で、しなやかで、つよい思考。すごいなあ。