手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

「カセットテープ・ダイアリーズ」

「カセットテープ・ダイアリーズ」2019 イギリス 監督:グリンダ・チャーダ

出演:ヴィヴェイク・カルラ、クルヴィンダー・ギール、ミーラ・ガナトラ 他

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最高でした。こういうハッピーな映画がいいですね。

途中で気づいたのだけれど、全体の雰囲気が「サニー 永遠の仲間たち(韓国 2011)」に似てゐる。80年代が舞台で、背景にけっこう深刻な政治問題があったりするけれど、音楽が楽しくて、映像がカラフルで、みんないいひと。恋は成就し、喧嘩しても仲直りできて、努力は報われる。

「カセットテープ・ダイアリーズ」が見事なのは普遍性と特殊性がどちらも大切で、ふたつを両立させることが出来るんだということをきれいに描いてゐる点だ。

この映画のなかで、普遍性はボス(ブルース・スプリングスティーン)の音楽が象徴し、特殊性は主人公一家の生活スタイル(インド系ムスリム)が象徴してゐる。

そして普遍と特殊の衝突が親子の不和および人種差別として描かれてゐる。主人公ははじめ特殊性に鬱屈を感じて普遍性へのジャンプに喜びを感じるが、やがてそのジャンプが可能なのは特殊性という足場があるからだと気づく。

普遍性がなければ他者とつながれないし、特殊性がなければ根無し草である。主人公は自分が成熟することで普遍と特殊をともに生きることができると悟る。

まっとうなメッセージを堂々と主張してゐる。それでゐて無類に楽しい。

ボスの音楽を主人公に紹介する友達、バイト先のイギリス親父、アメリカの入国審査マッチョなど、みんなボスを好きすぎるのが最高。楽しくてなみだホロリでしたよ。

先週見た「ベルファスト」に続いて大当たりっす。今年はツイてるぜ、と謎の高揚感につつまれてゐる。