「ハウス・オブ・グッチ」2021 アメリカ 監督:リドリー・スコット
出演:レディー・ガガ、アダム・ドライバー、ジャレッド・レト、ジェレミー・アイアンズ 、アル・パチーノ
楽しかった~。最高。大好きです。
グッチなんて自分と縁のない超高級ブランドだと思ってゐるので、80年代から90年代にこういうことがあったなんてちっとも知らなかった。そして崩壊しつつあるグッチを救ったのがトム・フォードであることも知らなかった。トム・フォードだってぼくにとっては映画「シングル・マン」を撮った人という認識。ぼくのファッションアンテナはそのレベル。
役者陣の演技を見るのがたまらなく楽しかった。大好きなアダム・ドライバーさん、今回も最高でございました。彼、ほんとにいいですよね。レディー・ガガさんはドはまりしてました。すさまじい生命力と官能。こんなのに誘惑されたらエエとこの坊ちゃんはワケも分からぬままに求婚しちゃうよね。あのラブシーンは可笑しかったなあ。
あとアル・パチーノさんがめっちゃ素敵だった。ファッション帝国の王だからやはり迫力はあるのだけれど、マフィアのボスみたいな残忍さはなく、やっぱり二代目だからか育ちがいいんですね、すごくやさしい顔をしてゐた。実にチャーミング。息子がグッチの株を売ってしまったのを知ったときの反応とか、その後に契約書にサインする、サインの仕方とか、最高でございました。かわいい!
パトリツィア(レディー・ガガ)とマウリツィオ(アダム・ドライバー)は育ちが違いすぎて相性が悪い、結婚生活が失敗に終わるのは眼に見えてゐる。だからオヤジさんも反対した。そりゃ反対しますよね、あれでは。
でも、マウリツィオには自分が育ちがいいことに対するコンプレックスがある。だからパトリツィアのような野生的で権力志向の女に惹かれてしまう。自分の品のよさを女の野生でメチャクチャにしてほしいんだ。他方のパトリツィアには自身の階級へのコンプレックスがあるから、マウリツィオをモノにしてのしあがりたい。
そういう二人が結びつくことは必然であるし、時間が経って破綻にいたるのも必然であるように思える。どこにでもある、誰もがよく知ってゐる、男と女のドラマ。それがファッション帝国の内部でおこるので、ただの惚れた腫れたですまなくなって、、、というお話。
占い師の人もよかったな。権力とスピリチュアリティの結びつきについて考させられる。本来的に権力と相性が悪い、そういう資質ではない人が権力に近づくと、スピリチュアルなものにすがらざるを得なくなるということかな。占い師は「こんなハズぢゃなかった」と思ってゐるだろう。ひどい女につかまってしまったと言えなくもない。
けれど彼女もまたマウリツィオと同様に「この激しい女にメチャクチャにされたい」という気持ちがあっただろう。パトリツィアはそれほどに破滅願望を刺激する人で、実際にマウリツィオも占い師をそれをしっかり満たしてもらえたのだから、そういう意味では、パトリツィアはやはり「いい女」なんだと思う。
楽しかった。素晴らしい秋の夜を過ごすことができた。