「簿記物語」海生裕明 長崎出版 2008
チャコに☟のモフモフベッドをくださった松本さんは公認会計士の資格をもち、監査法人で勤務した後に独立し、いまは個人事務所で中小企業の経営支援をメインに活動してをられる。
ぼくは会計やら経営やらといったことにまったく無知であるのでどういう仕事なのかさっぱりわからない。ある時、公認会計士というのはどういう特殊技能をもってゐる人なんですかと聞いてみた。そしたらひとこと「決算書が読めるってことだね~」と返ってきた。決算書とは次のようなものである。
「簿記は何のためにあるかといえば決算書、つまり損益計算書と貸借対照表を作成するためにあるんだったよね。じゃあ、この決算書は何のためにあるかといえば、経営者が経営判断をするために必要とするだけでなく利害関係者、例えば、銀行や税務署が見るためにあると考えるんだよ。つまり、決算書をみて、どのような取引をしているかがわからないといけない。だから、取引内容がわかるように区別しておくんだよ。 78-79頁
「決算書を読む」のはけっこうむづかしいことで、松本さんによれば、経営者であっても正確に決算書を読むことができず、いまどういう財政状況にあるのか、いつ資金が尽きるのか、どの費用が経営を圧迫してゐるのか、といったことをきれいに分析できない人が多いのだそうだ。だからコンサルタントという職業が成立するのだと。
次の記述なども「決算書を読む」能力がいかに重要かをよく語ってゐる。
まず、A社の株式に興味を持ったならば、その会社の貸借対照表を過去10年間分入手して、それをじっくりと眺めてみること。損益計算書ではない。損益計算書をみても会社の規模はわかっても、会社の体質や本質は見えないから。
しかし、貸借対照表は、会社設立から今日までの歴史をすべて表しているため、過去10年間分を見るとその会社の体質等が手に取るようにわかる。
それだけでは株を買ってはいけない。更に、A社の有価証券報告書を3年分入手して精査する。そして、A社に出向き、関係者の話を聞き、工場見学をする。ここまでして初めてA社の株を買える。 162頁
なるほど~。指揮者は楽譜を見ると音楽が聞えてくるというけれど、ひょっとしたら会計士は貸借対照表を見るとその会社の物語が浮んでくるのかもしれない。
夏から経済学に関する本を中心に読んでゐる。これまで強い関心をもってこなかったし、むしろ苦手意識があったくらいだけれど、いろいろ続けて読んでいくと面白くなってきた。人間変わるものですね。