「花束みたいな恋をした」2021 日本 監督:土井裕泰 脚本:坂元裕二
イヤホンにはじまり、イヤホンに終わる。同じ音楽を聞いてゐるつもりでも、実はちがう音を聞いてゐる。同じ道を歩いてきた二人がそれぞれ別の道へと足を踏み出す。
ああよかった、こんなふうに別れるのってむづかしいはずだぞ、二人ともえらい! という気持ちになった。彼等はきっとまた友達になれるはず。気持ちのいいエンディングだった。
けれど、あの中盤の展開を思い出すと、うう、苦しい。こんな恋愛をしたことはないし、同棲経験もないけれど、鑑賞中はやっぱり没入してゐるから、けっこうヘビーな気持ちだ。
人は変わってゆく。すべては変わってゆく。変わってもなお、二人一緒であり続けることの、なんというむづかしさ。ああ無常。
キヌ嬢は早い段階からいつか終わりがくることを感じとってゐた。こういうのは女性のほうが敏感なのかな。ムギ君がもうちょっといい会社に就職できてゐれば、、、とか。ムギ君、そんなにサラリーマン文化に完全適応しなくても、、、とか。考えちゃうな。
ラストのファミレスシーン。気持ちがゆらいで現状維持にしがみついてしまうムギ君。そんなもんだよね。わかりますよ。怖いものね。別れ方がわからなくてズルズル続けてしまうのって、けっこうあるのではないか?
他方のキヌ嬢は大人だなあ。このまま続けてゐてもダメなんだと、ちゃんとわかってるんだね。「だめよ、すぐ元に戻るわ。同じことの繰り返しよ」「またハードルさげるの?そうやって、こんなものだ、なんて思って暮らしていくの?」名台詞だあ😂
同年齢だとやっぱり男のほうが幼いものなのかな。しかしムギ君を責められない。彼はがんばった、立派。二人とも悪くない。ただ人は変わる。ずっと同じでゐられない。それだけ。それを受け入れて、次に進むしかない。喪失と再生。生々流転。そうとわかってゐても、あまりに美しいあの日々、なんという無常。
二人があと5年年嵩であったなら、別れずにすんだかもしれない。違う音を聞いてゐても一緒にゐられる、それが他者というものではないか。そう考えて、変わりながら関係を維持していくという方向へ踏み出せたかもしれない。
とにかく、あの別れ方ができた二人はえらい! 二人とも幸せになってくれい😉
主演のお二人すばらしい演技でした。感激いたしました。