手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

love me, I love you のドラム

咳が出てつらいと友人にラインしたら、「無菌状態に慣れすぎ、みんなあちこち弱ってるからな」と返ってきた。なるほどそうかもしれない。「B’zの蒼い弾丸の引用ですが、すでに90年代から予見されてたんやね」と続いた。

さまよえる蒼い弾丸」はサビの「飛びだしゃいい~♪」しか思い出せなかった。聴いてみたらAメロで稲葉さんが「無菌状態に慣れすぎ、みんなあちこち弱ってる~♪」と歌ってゐた。

私は90年代Jポップで育ったから B’z の二枚のベストアルバム「Pleasure」と「Treasure」はよく聴いた。でもある時期からさっぱり聴かなくなった。友人のせいで「飛びだしゃいい~♪」が頭から離れない。どうしても B’z を聴きたくなって図書館へ行った。

「ULTRA Pleasure」を借りた。そういう新しいベストアルバムがあることも知らなかった。私はサブスクで音楽を聴かない。図書館でCDを借りてPCからウォークマンに落して聴く。サブスクが嫌いという思想をもってゐるわけではない。ただ習慣的にそうしてゐるだけだ。

ひととおり聴いて「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」「ねがい」「love me, I love you」の三曲が特別に優れてゐると感じた。メロディーがいい。歌いやすい。シンプルで短い。短い、というの実によいことだ。どんどん展開してあっけなく終る。ストイックだ。子供のころには、ストイシズムなんて言葉を知らなかった。

なかでも「love me, I love you」が最高の曲だと思い、繰り返し聴いた。本当にいい歌だ。なにが違うのだろうと考えた。考えて考えて、ドラムがいいと気づいた。「ドラムだ!」という言葉が頭に浮かんだ直後に凄い歓喜がおとづれた。絶対にそうだと思った。ドラムがいいとわかって聴くと、なおドラムがよかった。

私は高校で吹奏楽部に所属しパーカッションを担当してゐた。文化祭ではバンドを組んでレッチリのカバーなんかやった。だから、ドラムだけは少しわかる。「love me, I love you」のドラムは最高だ。まづ叩くだけで高難度と思う。ハイハットで三連を精確に刻み、バスドラをもたつかずに打ち、変則的なフィルを入れるのは大変。

技術的にむづかしいことをやって、その上でグルーヴ。ハイハットもスネアも本当にいい音だ。重く凝縮された音、粒立って輪郭がはっきりしてゐる。私は特に、タムタムのトトトが好きだ。トトトのあいだの空白がいい。こんなの叩けたらたまらないだろうな。

こんな凄いドラムを叩くのは誰なんだろうと調べてみたら、青山純というスタジオドラマーだった。山下達郎MISIA のサポートで有名とのこと。知らなかった。2013年に56歳で亡くなってゐる。

没後十年にして偉大なドラマーの存在を知った。合掌。

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