手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

「伊藤真の法学入門 講義再現版」伊藤真

伊藤真の法学入門 講義再現版伊藤真 日本評論社 2010

読んでよかった。勉強になった。憲法学者が学校で法学教育をやったほうがいいと言うのをときどき聞くけど、まったくその通りだ。ここに書いてあるような内容を高校で教えるべきだ。政治と社会が大きく変わると思う。

自民党憲法草案や議員の発言から分かるのは、彼らが人権とか個人という概念がとにかく嫌いであること。彼らの言う国家や公の秩序は「オレタチ」と同義であること。要するに彼ら自身が個人として生きてをらず、国家と一体化したオレタチとして自己を認識してゐる。頭の中身が完全に封建時代なのに戦慄を覚える。どんどん後退してゐる印象。世襲世襲世襲

著者が「法は特定の価値観を権力によって強制する規範(17頁)」とし、法と価値の問題を繰り返し説いてゐるのが強く印象に残った。法的安定性などどうでもよいとうそぶいて恣意的な法解釈を行う政府にも、法の抜け道を歩くことを賢いことの如く語るインフルエンサーにもうんざりだ。価値観が狂ってる。

 法は、たしかに条文や判例というルールの「形」で存在するものではあるのですが、それに尽きるものではないのです。法の背後には、法を支える価値観として、正義や衡平、自由や平等などの自然法的な価値があるのです。たとえば、被告人だけに弁護人がつくことが、憲法の理念や黙秘権保障のような人権条項の精神に照らして許されるべき問題なのかを考えることです。このように、条文や判例を操作することによって得られたいったんの結論が、法を背後から支える価値観や理念に照らして妥当かどうかを判断する力こそ、リーガルマインドのもっとも重要なものです。 57頁

 個人の尊重はもっとも重要な究極の価値です。それに基づいて憲法は人権保障条項を定めています、統治機構の条文も重要ですが、それは人権保障を確実にするための手段として定められたものです。人権という、価値の高い大切なものを保障しようとしていることこそが、他の法にはみられない憲法という法の特質なのです。人権を保障するために国民が国家権力を制限する役割をもった法であるということこそが、憲法最高法規たらしめている実質的な理由なのです。 72-73頁

 法を考えていくときに、きれいに整理された憲法を頂点とする法体系を構築するように、論理的、合理的に整理しながら考えていくことはたしかに重要なことです。ですが、先にも述べたように法を離れたところでの価値基準、そもそもその法によって実現したかった根本の目的や価値はどこにあるのか、ということを常に忘れてはならないのです。細かな条文の解釈や法の適用の仕方を学ぶのは大切ですが、それ以上に、そもそもその法が何のために存在し、どのような価値を実現しようとしているのかという根本の部分のところを忘れてはなりません。 74-75頁