メモのみ。
仏教の革新性。ヴェーダ文献を根本聖典とするバラモン教に対する反逆。
このようなバラモン教の教義は、実はバラモンを最上位とする厳格な階級制ーー古代的身分制と不可分の関係にあった。すでに述べたように煩瑣な祭式万能主義的な側面がこのバラモン教にはあり、この祭式の執行がバラモンたちによって独占されていたのであるから、彼らのみが輪廻から脱出して解脱の道に達することができるということになる。これでは、宗教的解脱もバラモンにのみ専売特許されるということになる。
このバラモンにとっての身勝手な宗教思想に反逆が起きても、何らおかしくはなかった。そして、その宗教的反逆を可能とするような現実の政治経済過程の再編が起こっているとき、まさに仏教等の新思想が運動として起こり、それが広汎な人々の共感を引くところとなったのであった。 95-96頁
中世インド、ヒンドゥー教とイスラーム教の融合をはかった思想家カビール。カビールからナーナク。混成言語・ウルドゥー語の形成。
インド=イスラム文化の成熟を典型的に示す文化的事象として、新しい混成言語であるウルドゥー語の生成と発展とがある。
ウルドゥー語とはトルコ語で軍隊の陣営を意味する「オルドゥ」が訛ったもので、一八世紀ごろ宮廷を中心に北インドで広く使用されていた言語をザバーネ=ウルドゥーエ=ムアッラー(「高貴なる陣営のことば」の意)と称していたところ、それが簡略的にウルドゥー語(ザバーネ=ウルドゥー)といわれるようになったものである。
もともとこの言語は、いろいろな母語を話す人々の集まる軍隊の陣営やバザールなどで、ヒンディー語を文法的基礎としつつ、ペルシア・アラビア語系の語彙を大幅に取り入れた共通語の話しことばとしてできた言語で、その起源は古く一三、一四世紀ごろまで遡りうるものである。 171頁