手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

お客さん

お客さん

むかし 生理のことを「お客さん」といったらしい

きょう お客さんの日なの 

などと

 

お客さんは 毎月 数日のあいだ 女性のからだに 滞在して

血とともに 去ってゆく

お客さんと仲良くできる人もゐるし そうでない人もゐる

どんなお客さんがくるのか やさしい人なのか こわい人なのか

いつ来て いつ去るのか 選ぶことはできない

女性は きたお客さんを 受け入れ 去るのを 待つ

 

ぼくは男性なので そのような「お客さん」は 訪ねてこない

けれど 別の「お客さん」が しばしば やってくる

それは世間で 鬱 と呼ばれてゐるような ちいさなかたまり

ちいさな鬱さんは その字のように 

いろいろな「像」と「意味」の凝縮で 何者なのか しれない

「淋しさ」や「不安」に すこし 似てゐるかもしれない

 

ちいさな鬱さんは 「こころ」にやってくる

「なぜこころに居座るの?」と聞いても 黙ってゐる

たぶん 人のこころは 居心地がいいのだろう

彼はきっと いつも旅をしてゐるのだ

旅につかれると 人のこころで 休み

元気になったら また 旅にでる

 

だから ちいさな鬱さんがやってきたときには

自分のこころで ゆっくり 休ませてあげなくてはいけない

きれいに掃除をして おいしいごはんをあげて

風呂をわかして 気持ちのいい寝床を 用意してあげよう

 

今朝 ぼくのこころに お客さんがやってきた

だからぼくは 彼のために こころのために 

この詩を書いた

 

きょうは お客さんの日だ