手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

「フレンチアルプスで起きたこと」

「フレンチアルプスで起きたこと」2014 

監督:リューベン・オストルンド 

出演:ヨハネス・バー・クンケ、リーサ・ローヴェン・コングスリ

めちゃめちゃ面白かった。

緊張して、大笑いして、う~んと考えて、え!ってなって、

最終的に、よくできた映画だなあと大いに関心する。

舞台はフレンチアルプスのスキーリゾート。

親二人、子二人の家族がバカンスにきてゐる。

レストランで食事をしてゐると、人口雪崩のミスがあって、予想外に大きな雪崩がおそってくる。

みんな無事なのだが、そのとき夫のほうが子供をほっぽらかして、いちもくさんに逃げだしてしまう。

それがショックで妻は夫に対する信頼を失ってしまう。

子供の様子もどこかへんだ。

夫のほうは「逃げた」という事実を受け入れられないものだから、記憶を改竄してしまってゐて話が通じない・・・

信頼が失われた夫婦が、男も女も、精神的に不安定になって壊れていく様子はかなり怖い。

妻がグっとこらえて追い詰めなければ、なんとか持ち直すことができたのかもしれないけれど、妻は妻で不安定になってゐるから、とにかく、詰めてしまう。

信頼の崩壊というのはそれほど大きい。

追い詰められた夫は完全に幼児がえりしてしまって、無様にも泣きじゃくる。

コメディとして撮られてゐるから笑えるけれど、男としては、きつい。

終盤まで、「これでは男を追い詰めすぎではないか?」と思って見てゐた。

しかしラスト15分でとってもおかしい茶番があって、夫婦と家族はなんとかそのかたちを取り戻すことになる。

あの遭難の茶番ぶりはおかしみがあって、すごくいい。

あれは妻の演技だろう、と思う。

あれで夫のプライドを回復させて、なんとか、「家族」という物語が回復する。

そしてラスト、冒頭の雪崩のときとは逆に、妻のほうが大騒ぎしてビミョーなことになるのだが、このとき夫は妻を追い詰めない。

何をするのかというと、タバコを吸う。

これがわらえる。

追い詰めないこと、相手のメンツを守るような茶番をだまって演じられることが「夫婦」というものなんだなあ。

というタバコの一服。

まいったなあ。

ほんと、終盤まで、こわいよお、こわいよお、という気持ちで見てゐたから、ラストの茶番があって気が抜けた。

追い詰めてはいけませんね。