手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

「プライベート・ライアン」

プライベート・ライアン」1998 アメリカ 監督:スティーブン・スピルバーグ

出演:トム・ハンクストム・サイズモアマット・デイモン  ほか

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なぜだか分からないけれど長くて重厚な映画が見たい気分になって10数年ぶりに「プライベート・ライアン」を観た。とてつもなく立派で且つべらぼうに面白い。

ウィキペディアによれば撮影期間はわづか二ヶ月らしい。3時間のそれも銃撃爆撃シーンが大量にある映画をたった二ヶ月で撮れるものなのか。信じがたいがスピルバーグというひとはそういうことが出来てしまうのだろう。

初見時よりもだんぜん感動が深かった。10数年の鑑賞歴だけ目が肥えたということがあるだろう。また昨今の政治情勢から戦争をよりリアルに感じるようになって、ついスマホを触ってしまうことが多い室内での映画鑑賞を真剣なものにしたのかもしれない。

トム・ハンクスは1998年には40代前半か。本当に素晴らしい俳優だと思った。

トム・ハンクス演じるミラー大尉はタフで聡明で判断力にすぐれる優秀な指揮官であるが、きれいな顔立でマッチョではないから軍人軍人してゐない。だから部下たちからはこのひとは何者なのだろうと思われてゐる。

中盤、彼は自分が教師であることを明かす。それを聞いて部下たちは一瞬黙ってしまう。教師をしてゐた人間がこれほど優秀な軍人になることに戦争の恐ろしさと人間の不思議を感じるから。同時にミラー大尉の底知れない魅力はここから来るのかという納得があるから。トム・ハンクスでなければだめだ。物凄い説得力。

大尉達はついにライアンを発見し帰国するよう説得するが、ライアンは仲間を残して自分だけが帰るわけにいかないと拒絶する。それを聞いてミラー大尉は何も言わずうんうんと数回うなづく。このショットが好きだ。

ミラー大尉の情がおおきく揺さぶられる瞬間だ。ミラー大尉を横から映し、表情はヘルメットに半分隠れて口元しか見えない。けれど彼がなにを考えてゐるのか分かる。ライアンは立派な青年である。この任務は間違いではなかった。彼が帰らないと言うなら自分たちもここに残ろう。そしてなんとしてもこの青年を守ろう。

名シーンだと思う。泣いてしまった。