手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

「エベレスト 3D」

「エベレスト 3D」2015 アメリカ 監督:バルタザール・コルマウクル

出演:ジェイソン・クラークジョシュ・ブローリンジェイク・ギレンホール ほか

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映画館の大画面で3Dで見る、その映像体験が売りの映画なんでしょうね。それがないと、ちょっときついかな。

1996年に実際におこった遭難事故をもとにしてゐるとのことだが、この事件は映画化すべきではないのではないか。顛末があまりにお粗末なので、映画として面白いとか退屈とかいう感想がまったくない。

まづ、事故発生の根本的な原因が「渋滞」であるというのが情けない。商業登山が活発化して、素人の挑戦者が増えてゐたことが背景にあるようだ。それで96年はすごく混雑して、しかもみんな縁起のいい5月10日に挑戦すると言ってゆづらない。それで大渋滞がおこる。

リーダーの判断は不適切、ツアー参加者はわがまますぎる。行けというのに行かない、行くなというのに行く、ロープがない、酸素がない。ひどすぎます。最悪の状況で最善の選択をする人物とか、はじめ身勝手だった人が危機のときに利他的な行動をとるとか、リーダーの自己犠牲によって誰かが助かるとか、そういう救いになるような場面がまるでない。

たいへん悲劇的な事件なんだけれども、ぼくはこの映画を見て、これでは自業自得と言われても仕方ない、危険な登山なんかやめた方がよい、というどうしようもない感想をもった。

エベレスト登頂が題材なのだから、「挑戦するってやっぱり素晴らしいな」とか、「チームワークって大事だよな」とか、「こういう人間こそ真のリーダーだ」とか、悲劇から教訓を引き出せるような描写がちょっとはないとまづいでしょう。

でも、そういうのがない事件なんですよね、、、たぶん。

司馬遼太郎ノモンハン事件を書かなかったのは、作戦に参加した軍人達のなかに共感できる人物がひとりもゐなかったからだという話を思い出したことですよ。