手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り

「自衛隊と憲法」木村草太

自衛隊憲法」2018

著者:木村草太 出版社:晶文社

 

憲法改正について議論するにあたり、その前提となる知識を正確かつ体系的に、分かりやすく説明することを目的に書かれた本。

たいへん勉強になった。

ただ、どうしても法律に関する知識は定着が悪い。

ぼくなど意欲的に勉強してゐるほうだと思うが、それでも読んだらだいたい忘れてしまう。

法律用語としての「戦争」と「武力行使」の違い、とかさ。

実際、むづかしいよ。

「押し付けれらたものだから変えよう」とか、「憲法9条で拉致はふせげなかった」とか「お父さん憲法違反なの?」とか、政治家がろくでもない文句で改憲を叫ぶのも、実際、納得はできる。

真面目に法学的な議論をしたら、ふつうの国民はついていけない。

とてもむづかしいから。

だからこそ、政治家には良識が必要なんだ。高い見識と倫理感と公共心が必要なんだ。

民主主義というのは実にたいへんな制度だとつくづく思う。

主権者である国民が法律の条文に多少親しんでゐないといけないんぢゃないかな。

木村さんは、法学教育の導入を訴えておられる。

はげしく同意する。

最終章では議論にあがってゐるいくつかの改憲の提案について解説されてゐる。

ぼくがこれは是非と思ったのは、憲法裁判所の設置についてだ。

2015年、安倍政権は憲法学者の9割が違憲という安保法制を成立させた。

このとき多くの人が、なぜとめられないのかと思ったものだ。

法案を提出する前に、安倍政権は集団的自衛権違憲とする内閣法制局長官を辞めさせ、容認に前向きで、法制局勤務経験のない外交官出身の人物を長官に据えたのだった。

これに対して、現在の制度では裁判所は何も言えない。

つまり、行政府が法体系をねじまげ、それに対して国会も司法もなにもできないというわけだ。

行政府の異常なまでの肥大というか暴走というのが第二次安倍政権下でおこってゐることだ。

木村さんは次のような提案をしてゐる。

 そうすると、内閣法制局よりも独理性を高めた、憲法判断ができる専門家の会議を立ち上げるという方法もあります。例えば、衆参両院の憲法審査会が、「専門調査会議」のようなものを設置し、憲法学者・元裁判官・元検察官・弁護士や内閣法制局の長官経験者からメンバーを選抜し、違憲の疑いのある法案については、その会議で合憲性を判定してもらい、「意見書」をまとめて、憲法審査会に提出してもらうという制度はどうでしょうか。 これができれば、憲法裁判所でなくとも、かなり権威のある判断が示されるはずです。また、人選を憲法審査会の全会一致のような形で決定すれば、内閣や与党からの独立性も確保できます。

是非やりましょう!

安倍政権の後はたくさんすることがある。ほんとに。

二度とこんな政権が登場しないように、暴走できないように、制度として、つくる必要がある。