手探り、手作り

樂しみ亦た其の中に在り🌴

「韓国 内なる分断」池畑修平

 
最近、友人が泊まりにくることがあって、その際、日韓関係について話をした。
ぼくはお互い妥協して、なんとか落としどころを探り、友好関係の構築に努力すべきだという考えだ。
友人は、韓国は事実の誤認や、蒸し返し、取り決めの反故などがあまりに多いので話し合いは難しいという考えだった。
ぼくは彼を説得できず、彼はぼくを説得できなかった。
大日本帝国が行ったことについての価値判断がズレており、未来をどうつくるかというビジョンもすれ違い、それぞれが自説を補強する枠組みと知識をもってゐるなかでの対話だった。
午前3時過ぎまで語り合って、現状、和解は難しいという結論に達した。
それは、ぼくと友人とがビジョンを共有することが難しいということでもあり、日本と韓国が和解にいたることは当分無理だろうということでもある。
ぼくと友人は、お互いに敬意をもってゐるがゆえに「論破」しようとしたり、打ち負かそうなどとは考えない。
だから対話は成立する。そして、まあ、これは難しいね、ということで友人関係は続けていくことができる。
国と国とのあいだも、そのくらいのレベルにまで引き上げることができたらいいと思う。
今はお互いがメンツの張りあいになって、どっちも折れることができなくなってゐる。解釈の余地のある問題に対して、双方が都合のいいように立場をつくり、またどちらも、一貫してゐるとは言えず、主張はしばしば変わる。
どっちもどっちという考えは嫌いではあるが、現在の日韓関係のように両国のアイデンティティに関わる領域で対立が起ってゐる場合に、「勝敗を決める」ような文脈におとしこんではいけないだろうと思う。
負けたほうは必ず相手を恨むからだ。
どっちも折れたほうがよい。そういう指導者を両国が民主的に選出できるかにかかってゐるだろう。
「和解は難しい」
ぼくは長い対話をして、この事実をかなり深刻に受けとめた。
和解をして、友好関係を築くためには、日本側が歴史修正主義と決別し、過去と向き合うことが必要だとぼくは考える。
細かい話はいろいろあるにしろ、根本はそこだろう。
心細いので、石破茂氏のブログを引用しておこう。応援してゐる政治家ではないが、以下の主張については、まったく同意する。
 我が国が敗戦後、戦争責任と正面から向き合ってこなかったことが多くの問題の根底にあり、それが今日様々な形で表面化しているように思われます。これは国体の護持と密接不可分であったため、諸般の事情をすべて呑み込んだ形で戦後日本は歩んできたのですし、多くの成功も収めましたが、ニュルンベルグ裁判とは別に戦争責任を自らの手で明らかにしたドイツとの違いは認識しなくてはならないと考えます(政府自体がヒトラーの自決によって不存在となったドイツとは当然異なることも考慮した上で、です)。(こちら
日本の戦後処理は「戦争責任と正面から向き合」わずに済むようなかたちでなされたのだった。それがサンフランシスコ体制であり冷戦構造というものだ。
しかし、このような認識は今の日本人にとっては不評だろう。それは「自虐史観」と呼ばれて、現在の「愛国者」から「反日」とレッテル付けされてしまう史観だ。
今や戦後日本が「戦争責任と正面から向き合ってこなかった」と考えてゐる日本人は少数派だろう。
日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。
という安倍首相の戦後70年談話における認識のほうが多数派だ。
いや「謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」はまったくそうなのだが、いまだに謝罪を要求されてしまう要因は、かなりの程度日本側の歴史修正主義的な態度(というのは安倍政権に代表されるものだよ)にその原因があるのではないか?
それが現在「解決済みだろう」「またいちゃもんかよ」という投げやりな感情のまえに見えなくなってゐる。
冷戦構造があまりにも長く続きすぎたことが、まっとうな理解を妨げ、対話の形成を困難にしてゐる。
歴史修正主義が強すぎる。大勝利といってよいだろう。
また、韓国側を攻撃する材料も、それはそれでたくさんある。
慰安婦合意を破棄にしちゃったり、大統領が任期の終了後に逮捕されたり自殺したりとかですね。
「そういう国民なんでしょwww」
と言おうと思えば言えてしまうような要素が実に豊富にあるのは確かだ。
が、そういう品位の欠けたものの見方はすべきではないとぼくは考える。
そもそも国家というのはそれ自体が暴力装置であり、どこの政府もウソツキであり、ろくでもないものである。
では、なぜ韓国に特別このような蔑視を向けるのかというと、下に見てゐるからだろう。日米同盟が機能してゐれば、アジアはどうでもよろしい、しかし中国は怖い。韓国はまあ旧西側陣営で、最終的にはアメリカがあいだに入ってくれるから、テキトーでええわ。くらいのものだ。
要するに、日米同盟依存症による幼児化の症状ということだろう。
じつに情けない。
この日米同盟依存症がいま「日本国」をほろぼそうとしてゐる。
はなしがそれた。
「韓国 内なる分断」は良書だ。
韓国の保守派と進歩派のあいだの分断がいかに深刻か、それが「つぶし合い」とも言えるような様相を呈してゐることが丁寧に書かれてある。
保守派と進歩派の対立はおおよそ分かってゐるつもりだったけれど、ここまで深刻だとは知らなった。
驚いた。
内容について書きたいが、疲れてしまった。
仕方あるまい。
ご飯にしよう。