「日本国憲法」2019
長谷部恭男 解説 新潮文庫
日本国憲法、大日本国憲法、パリ不戦条約、ポツダム宣言、降伏文書、日本国との平和条約(サンフランシスコ講和条約)、日米安全保障条約をおさめる。
日本国のかたちを知るうえでは必ず読まねばならない文書だから、たいへん便利。
こういうのが手元にあるといいよな。
長谷部恭男さんの解説がいい。
かなり硬質で、いかにも斯界の泰斗という感じの文章。本質的なことがらのみが、明晰なことばづかいで書かれてゐる。
背筋がのびます。
天皇制についての解説などまったく情緒的なところがなく最高。
憲法一条は、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」とする。象徴とは、抽象的な存在を表現する具体的なものをいう。ハトは平和の象徴であり、白百合の花は純潔の象徴とされる。
日本をはじめとする諸国家は、国民と呼ばれる人々の集合体が一体として行動するものとみなすという約束事の上に成り立つ抽象的な存在である。銀行や自動車会社のような株式会社と同様、国家も多くのメンバーから構成される法人である。国務大臣や裁判官、警察官等の職務にある具体的な人間の行動は、日本という国家の行動とみなされる。国家そのものは抽象的な約束事なので目には見えない。憲法は天皇がその抽象的な日本国を具体的な存在として象徴すると述べる。
天皇制をこういうことばづかいで語れないといけないよな、と思う。
この解説で書かれてあるようなことが、しっかりと頭にはいっている必要があるのだが、いかんせん、知力が及ばない。
悔しいなあ。