生活の芸術

ぼくはここで踏ん張る

「華氏119」

「華氏119」2018

監督:マイケル・ムーア

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 TOHOシネマズ新宿で鑑賞。

 土曜12時10分の回。観客はほとんど中年以上の男性。やっぱり、こういう映画に向けてアンテナを張ってゐて、且つわざわざ1800円払って劇場に足を運ぶのはそういう層に限定されてしまうのか。残念。

 映画は「なぜトランプが大統領になってしまったのか」を膨大な情報量と扇情的な編集でゴリゴリ描いていく。

 かなり面白いし、すごく勉強になるけれど、アメリカの選挙制度や風土、登場するけっこう有名であるらしい人々についてほとんど知識のない自分は、中盤でちょっと疲れてしまった。

 脳ミソの情報処理が追いつかなかったのだ。ネットで事前に情報を仕入れていったほうがよかったようだ。

 しかし、見てよかった。見るべき映画だった。

 なぜならこれは日本でも現に進行してゐる、「民主主義の死」に到るかもしれない大きなプロセスの一部を巧みに写し取った映画だからだ。

 ムーア監督はハフィントン・ポストのインタビューでこんな風に語ってゐる。(こちら

 この映画は、究極的にはファシズムについての映画だ。それも"21世紀のファシズム"だ。

 トランプのような人間が、人を自分の味方につけ、社会を引き継ぐかたちをとっている。それも、人を強制するのではなく、「僕についてきてくれれば、僕は君たちのためにこんなことができる」というかたちなんだ。
 非常に危険な事が起こっている。アメリカ以外の国でも同様なことが起こりつつある。
 そういう意味で、この映画は日本にむけてのメッセージが多くこめられた映画だと思う。アメリカで起こっているようなことが日本で起こらないための警告だよ。
 この映画を観た日本の観客が、首相に「トランプ大統領と距離を置いてほしい」という懇願の手紙を出してくれればと思う。
 今のところ、安倍首相はトランプ大統領の親友の一人のように見える。よい事ではないね。

 「日本で起こらないための警告だよ。」と監督は言ってゐるけれど、「もう起こってるよ」とぼくは思う。

  大統領選挙においてトランプの得票数は6300万、ヒラリーの得票数は6600万、そして投票に行かなかった人が1億人だった。票の多いヒラリーが負けてゐるというのも妙な話だし、何よりも、1億人もの人が政治を、あるいは既存の政党を諦めてゐるという事態が、極めて不健全だ。

 この不健全さは日本でもまったく同じだ。既存の政党がマジョリティを代表することができなくなって、多くの国民が政治を忌避するようになる。そうして投票率が5割程度の中で、かなり偏った考えを持つ人たち(それだけに結束は固い)が権力を握り、国家を乗っ取る。

 この映画を見て、本当に怖くなった。自民党安倍晋三のために総裁任期を6年から9年にした。だから今も首相にゐるわけだ。それが12年になり15年にならないとどうして断言できるだろう。

 違憲立法をしても、公文書改竄をしても、「LGBTは生産性がない」と言ってもおとがめなしなのだ。絶対多数を議会で握ってゐる状態では、実際どんな法案でも通せてしまう。彼は本当に自分のことを「立法府の長」だと思ってゐるだろう。

 安倍が倒れることがあったとしても、それで安心してはゐられない。たとえば橋下徹のようなもっとトランプ的で頭の切れるデマゴーグが、あっというまに首相の座に上りつめるなんてこともありうるのではないか。

 本当に怖くなった。

 全力で止めねばならないと思う。