生活の芸術

正しいことをひかえめに言う練習

「レオン 完全版」

「レオン 完全版」1994

監督:リュック・ベッソン 主演:ジャン・レノナタリー・ポートマンゲイリー・オールドマン

 

 この映画を見るのは三度目くらいかな。

 やっぱり面白かった。ラスト近く、レオンがマチルダ一人を通風孔から逃がすシーンの二人のやりとりなど、もう二人とも名演で、ああ、思わずウルウル来てしまった。

 この映画、冒頭から最後までずっと面白い。

 俳優のハマリっぷりも最高。ナタリー・ポートマンが異様にかわいくて妖艶だとか、ゲイリー・オールドマンが怖すぎるとか、それはもちろんなんだけれど、ぼくはジャン・レノの「最強の殺し屋」と「愛に戸惑う中年男」という二面の演じ分けにグっときた。

  最強の殺し屋が少女を愛してしまうなどとは考えられないことだが、あのナタリー・ポートマンなら仕方がない。二人の交情が深まってくると「ああ、なんとか一緒になって欲しいな」と願いはじめるのだけれど、この映画、画面全体から始終死の香りがただよってゐる。レオンは死ぬんだろうってことがなんとなく感じとれる。

 悲しい結末だけれど、孤独な男が愛に目覚め、愛する女のために死ぬという物語のカタルシスは巨大だ。

 レオンがマチルダと過ごした時間はとても短い。幸福な時間はほんのわづかだった。愛に気付きはじめたときに、はかなくも、別れはおとづれるのだ。

 けれどこの映画が悲しいだけで終わらないのは、いやむしろ、これでいいんだと感じられるのは、おそらく、命を賭することではじめて、レオンは彼女への愛を確信し得たのではないかと思われるからだ。

 上記した二人の会話からレオンが自爆するまでのクライマックスでは、死と愛と幸福と悲しみとかいちどきに襲ってくる、凄い力がある。

 最も純粋に女を愛し得たその時に死ぬ。あまりにはかない一瞬の幸福だが、それは長い長い孤独な時間を全て帳消しにするような、つまり「永遠」につながるような究極の愛だったのだと思う。

 レオンの冥福を祈る。合掌。