お気に召すまま

ー半島情勢を中心にー

中国、北朝鮮に特使を派遣。

 今週の気になるニュース。

 11月15日、朝鮮中央通信は「軽々しい追従行為の結末は悲劇だけだ」と題する論評を発表し、トランプに媚び諂ふ安倍外交に対して激烈な痛罵の言葉を浴びせた。

Naenara-朝鮮民主主義人民共和国

トランプの日本訪問期間、日本首相の安倍が演じた醜態が世人の非難を受けている。

安倍はトランプとの会談後に行った記者会見で、朝鮮に対する全ての選択案がテーブルの上にあるというトランプの立場を一貫して支持すると言いふらしながら、朝鮮問題において日本と米国の立場が100%一致するということを再度強く確認するという繰り言まで言った。

上司の対朝鮮敵視政策実現の先頭に立って軽々しく振る舞っている忠犬のずる賢い行動は実におぞましさをかき立てる。

米国であるなら、しゃにむに追従して神頼みにする政治いびつである日本特有の体質はほかにはなりえない模様である。

安倍が面映ゆいほどに上司をおだてながら北侵核戦争熱を積極的に鼓吹したことには自分なりの下心がある。

それは、もうろくした老いぼれトランプの虚勢をあおり立てて情勢を引き続き激化させ、その中で漁夫の利を得ようとすることである。

事実上、日本は朝鮮半島の情勢緊張を誰よりも切実に願っている。

朝鮮半島の緊張激化を憲法改正と軍事大国化実現のよい口実と見なしている安倍一味は、核戦争の危機を高調させているトランプの「狂人戦略」をもろてを挙げて支持している。

誰それによる「安保脅威」カードを掲げて執権の危機を免れることで面白みを覚えた安倍は意気軒昂として、上司の核戦争騒動を露骨にあおり立てている。

トランプの訪問を契機に、「国際社会全体に対する重大な威嚇」と「最大の圧迫」を大げさにけん伝しながら奔走したのも、このような腹黒い下心の発露だと言うべきであろう。

米国を後ろ盾にして大陸侵略の道にまたもや踏み出そうとするのは、島国一族が変わることなく追求してきた野望である。

前日本外交官が「現世界の各国指導者を見ると、国連総会で武力の威嚇をうんぬんするのはトランプだけ、各国指導者の中で追従するのは安倍だけ、この二人の会談が国際的にどんなに醜悪であるのか」と言ったことを注目する必要がある。

6日、米紙「ワシントン・ポスト」はトランプと安倍が朝鮮に対する共通の敵対感によって同じ方向に立ったが、彼らの関係は戦略的奴隷関係であり、トランプが安倍を包容する方式はまるで助手に対する態度だと評した。

結局、安倍が唱える「毅然として強力な外交」なるものは米国に追従する屈従外交にすぎない。

このような外交によっては「日本国民の生命と平和な生活を守る」どころか、むしろ禍根になるだろう。

日本は、張子の虎にすぎない米国にへつらって軽々しくのさばっていては悲惨な終えんを迎えることになるということを銘記すべきである。 

 まったく酷い言ひ様だが、その安倍理解には同意せざるを得ない。トランプ大統領は自らに進んで隷属する安倍首相を真に馬鹿にしてゐる。驚いたのは訪日時のゴルフの際、安倍がバンカーで転んで後ろに一回転してしまったことに対するトランプのコメントだ。以下の記事によればトランプは「私は見ていないが、ヘリコプターが上空から(転ぶところを)撮っていた。私は感動した。今まで見てきたどの体操選手よりも素晴らしかった」と述べたさうだ。

www.asahi.com

 安倍の追従ぶりも酷いが、トランプのコメントもまた頗る非礼だ。

 北朝鮮のミサイル迎撃のために導入される「イージス・アショア」の配備候補地が決まったさうだ。

www.asahi.com

 政府は北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射に対抗するため、新たに東西日本に1基ずつ配備する迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の候補地を秋田市山口県萩市の2カ所に絞り込み、地元と調整に入った。2023年度に運用を始める方針。

 政府関係者によると、政府は新型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」搭載のイージス・アショアを2基配備すれば、日本列島全体をカバーできると想定している。政府は運用主体となる陸上自衛隊の既存施設の中から、新屋(あらや)演習場(秋田市)、むつみ演習場(山口県萩市)の2カ所を有力候補地として選び、関係する地元国会議員に今月上旬、設置の意向を伝え、協力を要請した。政府関係者によると、陸自が警備しやすい利点があるという。

 政府は当初、地元の電波障害などの懸念を軽減するため、既存の航空自衛隊のレーダーサイト基地である加茂分屯基地秋田県男鹿市)や佐渡分屯基地新潟県佐渡市)などを配備場所とする可能性を探ったが、「十分な敷地面積を確保する必要がある」(政府関係者)との判断から見送った。

 イージス・アショアの導入の閣議決定は来月で、米ロッキード・マーチン社製のイージス・アショアの本体費用は1基あたり800億円、計1600億円が見込まれる。政府は来年度当初予算には調査費を計上し、地質や電波障害の有無などを調べるほか、米国から専門家を招いて導入に向けた検討を進める方針だ。

 イージス・アショアの運用に必要な要員数について防衛省は当初、1基あたり100~200人、2基で計200~400人を見込んでいた。ところが複数の防衛省関係者によると、陸自は「施設の警備なども含めて1基あたり600人、2基で計1200人が必要」と要求しているという。装備計画などをつくる内部部局が「人員の純増は厳しい」と陸自の要求に難色を示しているものの、本体の取得費や維持費に加え、人件費についても巨額のコストが膨らむ可能性が出てきている。

  2基で1800億円とはとんでもない買物をしたものだ。これが使用される日が来ないことを祈るが、それにしても今年運用を決定して運用開始が2023年度といふことにぼくは驚く。そんなに先になるのか。

 日本を射程に入れるミサイルを北朝鮮は既に開発済みであったが、今年に入って北朝鮮ICBM(アメリカ本土が射程に入る)の開発成功が近いといふことになってアメリカが騒ぎ出し、それに合はせて日本も騒ぎ始めた。それで安倍は「国難」だと喧伝し、ミサイル防衛システムの導入を決定しその運用開始が6年後だといふ。

 何だかなあといふ感じである。

 国際社会の中で安倍だけが「対話・交渉」の訴へを行ってゐない。その言葉に強い抵抗でもあるやうな印象を受ける。最初は「対話のための対話では意味がない」「今は対話ではなく圧力だ」だったのが選挙の頃から「政策を変へさせるために、圧力を更に強化する」になった。が、「対話・交渉」といふ言葉は安倍の口から一度も出てきてゐない。少なくともぼくが報道を追ってゐる限りではさうである。対話を始めなければ当然拉致問題も解決しない。

 以下の記事に米国の軍事専門家の発言が載ってゐる。そもそも「ミサイル防衛は不可能」ださうだ。

www.nikkan-gendai.com

  9日、外国特派員協会で、宇宙関連事業のコンサルティング会社社長のランス・ガトリング氏が「北朝鮮のミサイルと核」をテーマに講演した。ガトリング氏は、米陸軍で北東アジア地域の軍事問題について米国と日本の連絡担当を務めた軍事専門家でもある。
 トランプ米大統領は、6日の日米首脳共同記者会見で「(米国からの)軍事兵器購入が完了すれば、安倍首相は北朝鮮のミサイルを撃ち落とせる」と胸を張っていたが、ガトリング氏は講演でこう語った。
北朝鮮大陸間弾道ミサイルを日本は迎撃できるのかと問われたら、答えは“ノー”です。(迎撃するには)どこからどこへ発射されるのか『正確』に捕捉しなければなりませんからね。加えて、北朝鮮が日本の上空に向けてミサイルを飛ばすときは、ほぼ真上に発射するロフテッド軌道になります。高高度を飛翔し落下スピードが速いため、通常軌道よりも迎撃が難しい。迎撃にセカンドチャンスはありません。当然ながら、推測ではどうにもできないのです」

  韓国も中国も米国も「対話のための圧力」「平和的解決」を繰返し訴へてゐる。

japan.hani.co.kr

 レックス・ティラーソン米国務長官も10日、中国の北京からベトナムのダナンに向かう飛行機の中で、記者団に「結局、互い(米朝)が『良い』と言う日が来るだろう。その時が初めて『非公式の対話』(conversation)を行うのに良い時期」だと述べたと、「ブルームバーグ通信」が報じた。

 ティラーソン長官は「これは、交渉(negotiations)を始めるのではなく、非公式の対話を持つということ」だと強調した。しかし、「探索的対話」や「非公式の対話」は交渉の結果による政治的負担が大きい場合、公式交渉に先立って行われる手続きで、事実上の交渉の開始と見ることができる。

 ただし、彼は朝米間の「非公式の対話」のためには「北朝鮮が(米国)と話し合いたいという意思表示を、金正恩(キム・ジョンウン)自らがしなければならない」とし、北朝鮮最高位層のシグナルを待っていることを示唆した。これと関連し、匿名を求めたある消息筋は「北朝鮮は『非公式の対話』で制裁の解除問題などを議論すべきという立場を米国政府に要求していると聞いた」として、まだ水面下で神経戦が繰り広げられていることをほのめかした。

japanese.yonhapnews.co.kr

 北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議の韓国首席代表を務める李度勲(イ・ドフン)外交部朝鮮半島平和交渉本部長と米国首席代表のジョセフ・ユン国務省北朝鮮担当特別代表は17日、韓国南部の済州島で1時間余り会談した。双方は、北朝鮮はここ2カ月余り核実験やミサイル発射を控えているものの挑発を中断する意思を明確に示していないとして、当面は北朝鮮を非核化交渉に導くための圧力に重点を置くことで一致した。

 李氏は会談後に記者団に対し「韓米首脳は(7日の会談で)北の核問題の外交的・平和的な解決に合意した」とし、会談ではこの原則にのっとったアプローチ方法を重点的に話し合ったと伝えた。

 北朝鮮は9月15日に日本上空を越える中距離弾道ミサイル「火星12」を発射して以降、軍事的挑発をしていないが、李氏は「北はまだ(挑発を中断するという)意思を表明しておらず、(米国は挑発を中断した日と)カウントしていないと聞いた」と述べた。北朝鮮が「対話のために挑発をしない」ということを表明すべきだと米国側は考えているとも伝えた。挑発を控えている理由については「分からない」とした。

 一方、現状での北朝鮮に対する韓米共同の対応については「対話の場に呼び出すための制裁と圧力を続ける」と説明。北朝鮮が非核化交渉に臨む姿勢がないため、今は制裁と圧力に重点を置くが、北朝鮮を対話の場に引き出すことが韓米の基本的な目標だとした。

 かうした状況の中で中国の習近平国家主席が自らの特使を北朝鮮に派遣した。これは重要な動きだ。記事によれば、特使は習近平の親書を金正恩に伝へるといふ。

japan.hani.co.kr

 宋部長は初日、北朝鮮権力序列2位のチェ・リョンヘ労働党中央委員会副委員長に会った。二人は同席者とともに会談したが、内容はすぐに伝わってきていない。空港ではリ・チャングン労働党国際部副部長が宋部長を出迎えた。

 宋部長は昨年5月、北朝鮮労働党第7回党大会後に特使として送ったリ・スヨン党中央委員会副委員長に会っている。しかし、彼が対北朝鮮経験が豊富ではなく、政治局員の身分で2012年に特使として派遣された李建国に比べ格が低い中央委員級であるという点は、両国間の絆が弱体化されたというシグナルとして受け止められる。

 とはいえ最近2年間にわたり中朝間の高官級交流が事実上中断された状態で訪問したため、その意味は決して軽くない。中国外交部はこの日、宋部長の訪朝について「主要目的は第19回中国共産党全国代表大会の結果を通知し、北朝鮮側と両党、両国の共同関心事について意見を交換すること」と話した。儀礼的訪問だけではないことを示唆したのだ。

 宋部長は金正恩(キム・ジョンウン)労働党総書記に習主席の親書を伝えるものとみられる。2007年の第17回党大会での劉雲山特使や、2012年の第18回党大会での李建国特使は、それぞれ金正日(キム・ジョンイル)総書記と金正恩委員長に会い、胡錦涛主席(当時)の口頭親書と習近平主席の親書を伝えた。今回は中国が党大会を経て新たに樹立した「新型国際関係」などの対外政策や、最近の米中首脳会談などを通じてまとめた北朝鮮核問題に対する立場が届けられるものとみられる。

 状況と時期のために中国でも期待をかける声がある。官営「チャイナ・デイリー」は社説で「宋部長の訪問は、北朝鮮核問題の解決策に対する関連国の見解の相違が接近する時期に行われた」と話した。同メディアは、首脳会談で文在寅(ムン・ジェイン)大統領と習主席が朝鮮半島の平和・安定に意見をそろえたことを想起させた。

 特に韓米、米中首脳会談まで開かれた直後であり、北朝鮮がこの日で63日間ミサイル発射など“挑発”をしていない状況なので、米朝の対話局面への転換に宋部長の訪朝が何らかのきっかけになるかが注目される。いつを起点にするかは不明だが、ジョセフ・ユン米国務省北朝鮮政策特別代表が「60日間の挑発の中断」を対話再開の信号にすることができると言ったことが伝わりもした。一方、宋部長の訪朝がたいした成果がなく終われば、緊張の持続や悪化につながる蓋然性も多分にある。

  その中、米国のマティス国防長官が「北朝鮮が兵器の試験を中断すると共に開発を止め、輸出もしなければ、会談の機会があるだろう」と述べた。

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 中国の宋濤共産党対外連絡部長が習近平国家主席の特使として、17日から北朝鮮を訪問している中、ジェームズ・マティス米国防長官が北朝鮮に会談開催に向けた三つの「前提条件」を提示した。

 マティス長官は16日(現地時間)、米コロラド州コロラドスプリングスに位置した北米航空宇宙司令部に向かう空軍機で記者団に、「北朝鮮が兵器の試験を中断すると共に開発を止め、輸出もしなければ、会談の機会があるだろう」と述べたと、ロイター通信が報じた。マティス長官が言及した兵器とは「核およびミサイルプログラム」を指すものと見られる。マティス長官の発言は、中朝間の協議を控えた状況で、米国の要求事項を中国と北朝鮮に公開的に伝えると共に、圧迫する性格を帯びている。

 マティス長官が提示した公式交渉の再開条件は、レックス・ティラーソン国務長官などが最近、「非公式対話」の前提条件として示唆したいわゆる「挑発の中止」に、凍結と不拡散を加えたものだ。特に、トランプ政権の高官が核・ミサイルプログラムの輸出を禁止するいわゆる「不拡散」条件を提示したのは、今回が事実上初めてだ。しかし、トランプ大統領は韓国国会での演説で「ミサイル開発中止と完全かつ検証可能な非核化」を対話再開の前提条件として掲げるなど、トランプ政権内部に精巧に調整された「非核化プロセス」がないと指摘する声も上がっている。

 一方、ランダル・シュライバー国防部アジア太平洋担当次官補指名者は同日、上院軍事委員会の承認聴聞会で、理論的には韓国と日本の同意がなくても北朝鮮と戦争を開始できるとしながらも、「韓日の支援がなければ、米国がこの地域の軍事基地を使用できないため、対北朝鮮軍事行動を続けるのは不可能だ」と述べた。米軍単独で対北朝鮮軍事行動を遂行するのが難しいという点を認めたものと言える。彼は韓米日3カ国間の軍事協力について、北朝鮮の脅威が韓国と日本が協力し合うようにしているとし、「任命が確定されれば、これに力を入れたい」と話した。

 11月17日、中国環境時報は社説で宋濤の北朝鮮訪問に過度の期待をかけすぎてはいけないと主張した。

社评:对宋涛访朝鲜外界不应抱过高期待_评论_环球网

 即ち:結局のところ重要なのは米国の態度である。北朝鮮の安全を保障することが核問題解決の前提となるだらう。それは歯磨き粉を押し出す如き小出しにするやうなかっこうではいけないのだ。宋濤は魔法使ひではない。宋濤が米朝間の扉を開く手助けをできたとしても、双方それぞれが自らのロジックに固執してゐるならば、その扉はまた閉ざされてしまふだらう。ってなことが書かれてゐる。

 特使と北朝鮮との接触がどのやうなものになったのか。来週には何か報道が出るかも知れない。注視する。

 以下、核・ミサイル問題から話がずれるが気になったので備忘のために抄録しておく。

japanese.yonhapnews.co.kr

 韓国の産業通商資源部と関税庁は17日、1月からの輸出額の累計(暫定)が5012億ドル(約56兆4000億円)を記録したと伝えた。1956年に貿易統計を開始して以来、最短期間での5000億ドル突破となった。

 輸入額は4166億ドルで、産業通商資源部は今年の貿易額が1兆ドルを達成する可能性が高くなったと見通した。

 同部は最短期間での5000億ドル突破の理由として、輸出品目と地域が多角化し、品目別と地域別にバランスの取れた成長を見せたと分析した。

 主力品目のうち半導体石油化学、鉄鋼の輸出が大きく伸び、ほとんどの品目で輸出が善戦した。

 中国、東南アジア諸国連合ASEAN)、インドなど大部分の地域で輸出が増加し、特にASEANベトナム、インドなど新興市場への輸出の活性化により米国、中国などに対する依存度が低下した。

 産業通商資源部は、韓国が自由貿易協定(FTA)を締結した主要国への輸出品目が多角化し、これらの国の輸入市場で韓国のシェアが上昇傾向にあると説明した。

japanese.yonhapnews.co.kr

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は13日、フィリピンのマニラで開かれた東南アジア諸国連合ASEAN)ビジネス投資サミット(ABIS)で演説し、「(韓国とASEANの関係を)共存共栄する共同体を超え、危機時に力になる『平和のための共同体』に発展させていくことを提案する」と述べ、韓国政府のASEANとの協力ビジョン「未来共同体構想」を発表した。 

 最後は毎日新聞の記事「野党の質問時間削減 大政翼賛会への道、歩むのか」

https://mainichi.jp/articles/20171116/dde/012/010/004000c

 もしかしたら日本の運命を大きく変えることになるかもしれない。開会中の特別国会で、与党・自民党が、野党が国政をただす場である委員会審議の質問時間を削ってしまったのだ。「与党議員の質問機会が少ないから」が理由らしいが、それは事実か。大政翼賛会へと歩んだ戦前の国会でも、同じ動きがあったのだが……。【吉井理記】

 「国会が自ら、国会の権能を低下させる愚挙です。日本を破滅させた戦争の時代にも、国会の力を封じる動きがありました」と怒りが収まらないのは、「国会質問制度の研究」などの著書がある千葉商科大の田中信一郎特別客員准教授だ。

 歴史を振り返る前に、おさらいしておこう。問題になっているのは、衆議院の委員会審議などで、与野党の質問(正確には質疑。決められたテーマに限り問いただすこと)時間をどう割り振るか、ということだ。

 国会法や衆院規則、実務手引きである「先例集」にも明示がないが、野党の時間を多くするのが長年の慣例で、この特別国会まで「野党8、与党2」の割合だった。ところが自民党衆院選での大勝を背景に野党の反対を数で押し切り、まず15日の文部科学委員会で「野党2、与党1」とした上で、国会審議の中心となる予算委などでも配分を見直す方針なのだ。

 「2対1」なら一見野党が多そうだが、「それは錯覚です」と田中さん。

 「注意すべきは、この時間は質問だけでなく、首相や閣僚ら政府答弁の時間も入っている点です。与党から政府閣僚が選ばれるのですから、事実上は政府=与党です。するとどうなるでしょうか」

 例えば、野党の持ち時間を4時間として、質問2時間に対し、政府が答弁を2時間したとしよう。「2対1」だから、与党の持ち時間が2時間で、質問1時間、政府答弁も1時間とする。発言時間を単純計算すれば、野党の2時間に対し、与党+政府の発言は4時間、つまり「2対4」と逆転する。

 政治学が専門の明治大教授、西川伸一さんも嘆息する。「そもそも、国会は野党のためにあるといっても過言ではありません。なぜなら国会で議論される予算案や内閣提出法案は、全て与党が事前承認したものしか提出されないからです。だからこそ国会質疑を通じた野党のチェックが重要なのですが、その野党の質問封じは、国会の否定です。少数意見を聞かず、多数決ですべてを決めれば、国会の意味がなくなりますから。議論が政府協賛の与党色に染められ、『大政翼賛会』『戦前回帰』という指摘も、あながち絵空事とも言えなくなってきます」

 帝国議会ではゼロの時も

 では、その戦前の国会である帝国議会で、何があったのか? 田中さんが解説する。

 「帝国議会では最初、議員が政府に国政全般をただす『質問』は制限されていました。それでも田中正造自由民権運動を率いた先人の努力が、政府をただす機会を広げていったのです。しかし軍国主義が高まる時期から、議員が政府に質問する場が再び制限され、国会の力が失われていきました」

 当時は書面質問が原則だったが、議員は内容や理由を議場で演説することが慣例になっていった。田中正造はこうした質問を通じて足尾鉱毒事件を社会に問うことができた。

 慣例は「先例集」にまとめられ、国会運営のマニュアルとなっていたが、1935年前後に慣例が改められ、議員の演説時間や、政府答弁に対する再質問を制限する改定がなされた、という。残された「先例集」からは、改定を誰が言い出したかわからないが、議会多数派(当時は立憲政友会)の可能性が高い、という。

 「この時期は、満州事変(31年)で国際的孤立が深まり、天皇機関説事件(35年)など、思想弾圧が激しさを増す時代です。そんな風潮を反映し、国会で議論することに疑いを持ったり、政府批判は許せないと考えたりする議員が増えたための改定でしょう。つまり国会自ら、国会の力を弱めたのです」

 この結果、政府への質問そのものが国会から消えていく。田中さんによると、大正デモクラシー期の第31回帝国議会(13~14年)では衆院で計100件の質問があったが、各政党が大政翼賛会に合流した後の第76回帝国議会(40~41年)では18件。日米開戦後は質問ゼロという国会もあり、43年6月~44年9月の4回の国会は、1件の質問もなかった。国会が、政府の追認機関に堕した結果である。

 「国会の監視機能が働いていれば、無謀な戦争をしたり、続けたりすることはなかったかもしれない。でも結局、国会が機能しないがために、国を滅ぼす政策を止められませんでした」

 そもそも今回の問題は、自民党の若手議員が「自分たちの質問する機会が少ない」と訴えたことが発端とされるが、この理由には裏付けが乏しい。

 なぜなら、本当に政府をただしたいなら、時間もテーマも制限されない書面質問(質問主意書)が可能だからだ。例えば、「森友・加計(かけ)学園問題」で揺れた今年の通常国会では、衆院で438件の質問主意書が出されている。さて、与党分はどれだけか?

 「ゼロ」である。政府をただすのは与野党を問わず、国会議員の責務だ。質問主意書が出されれば、答弁書を作る各省庁の職員の負担は増えるから、主意書の乱発は論外だが、本来なら与党議員も出すべきものだ。実際、旧民主党政権時代は民主党議員も出していた。

 立憲民主党川内博史衆院議員もその一人だ。旧民主党議員時代の2010年、鳩山由紀夫政権に官僚の天下り規制のあり方を問う主意書を出した。

 「規制のあり方が甘いと感じ、政府をただしました。政府をチェックし、政策を良いものにするために、必要と思えば出すべきです。自民党の若手議員の活躍の場がないというなら、もっと政府内に若手を登用すればいい。そもそも与党は、自分たちが国会に提出する法案を自分たちで承認しておいて、国会で何を問うつもりか。『安倍1強』と呼ばれる状況で、政府のチェックがきちんとできるのか」

 その自民党のベテラン議員によれば、かつては与党議員の依頼で、各省庁が質問を作り、答弁も書く「自問自答」が横行していたらしい。さすがに最近は少ないようだが、この議員は「今でも『貴重な質問の機会を頂いて』とか言いながら、『○○大臣のご決意をお聞かせください』『××に行かれたご感想は』なんて、恥ずかしい質問をする若手がいる。時間をくれと言う前に、質問力を磨くべきだ」と首を横に振るのだ。

 では、野党の質問時間を削ることは何を意味するのか? 田中さんがまとめた。

 「今のまま質問時間を減らせば、国権の最高機関として政府をチェックする機能は確実に低下する。これは間違いない。厳しい監視にさらされてこそ、健全な政権や政治が実現するんです。国会が機能しないことが、この国に何をもたらすか、72年前に私たちは経験済みです。与野党の政争とか、そんな小さな話ではないんです」

 自民党の選挙スローガンは「この国を、守り抜く。」であった。今からでも遅くはない。この国を守るためにこそ、野党の声に耳を傾けるべきだろう。