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ー半島情勢を中心にー

第48回衆議院議員総選挙

 第48回衆議院議員総選挙は本日、投票日を迎へた。台風の接近のために全国的に雨。普通の雨ではない、大雨だ。この荒天では外出が億劫になる。が、もちろん投票に行ってきた。

 それ以外の外出は全部とりやめても、選挙だけは行かねばならぬ。それほど大事な選挙だ。

 今回の選挙は、安倍晋三にこのまま総理大臣を続けさせていいのかを問ふ選挙だ。ウソばかりの政治を許すのかを問ふ選挙だ。差別と分断の社会か、多様と包摂の社会かを問ふ選挙だ。沖縄に基地を押し付けたまま対米従属路線を深化させてよいのかを問ふ選挙だ。そして、立憲主義と民主主義を憎悪する勢力による憲法改正と法治の抹殺を許すのかを問ふ選挙だ。

 要するに今回の選挙では、有権者・市民の良識が問はれてゐるのである。

 台湾でも韓国でも長い独裁政権が続くなか、市民が戦って勝ち取った民主主義がある。日本は長く彼らを見下してきた。自分達のほうが先を行ってをり、経済的にも発展した、豊かで平和な先進国である、と。

 しかし、違ってゐた。安倍政権の5年が示すもの。それは日本の戦後に民主主義なんて根付いてゐなかったといふことだ。極めて低い投票率の中、過半数を獲得した政権与党が、勝てば官軍とばかりに、選挙前にはおくびにも出さなかった政策を次々と決定してきた。迂闊な国民は何が起こってゐるのかを理解するための知的労力を惜しみ、このウソばかりの政権に高い支持率を与へてきた。

 結果、何が起こったか。法治は大きく損なはれ、排外主義が勃興し、富める者はさらに富み、貧しき者はより貧しくなった。すなはち、弱者に冷たい社会になったのだ。

 自分の支持者は優遇する、何なら犯罪行為も見逃す。しかし反対勢力は排除する。現政権に反対するものは「反日」であり「国賊」であり「パヨク」であり「中国のスパイ」であり「朝鮮人」である。だから排斥してもよろしい。そんな排除の思想が現政権のエネルギー源だ。当然社会は分断される。今の日本で安倍政権を支持する人たちと、それに反対する人たちの間には深い溝ができてゐるやうに思ふ。

 当然、そんな世の中は嫌だと考へる市民がゐる。哀しいことにさうした市民の良識を救ひあげ、代表することのできる野党はこれまでなかった。

 しかし、つひに、解散権の乱用と国会の軽視、国難のでっちあげといふそれこそ民主主義に対する侮辱でしかない今般の衆議院解散に際して出てきたのが、言ふまでもなく枝野幸男代表率ゐる立憲民主党である。

 彼はその演説において何度も「立憲民主党はあなたです」と繰返し言ってゐた。そしてそれを聞いた市民が「応(おう)」と叫んだ。ぼくもその一人だ。

 これは新しい。大変新しい。少なくともぼくの知る限り(まだ31歳だけど)初めてのことだ。政治に積極的に関はりたいと思ふ市民の声が直接的に具現化した。枝野代表の言葉で言へば、まさに、上からではなく下から、出てきた。

 SNS上の声を見れば明らかだが、潜在的な支持層は極めて大きいものがある。立憲民主党は事前の予想以上に議席数を伸ばすかもしれない。いや、伸ばしてほしい。改憲勢力から一つでも多くの議席を奪ふことが現状一番の国益であると考へる。

 ぼくの居住する選挙区からは立憲民主党からの候補者はゐなかった。だから共産党の候補者に投票した。2015年以来の野党共闘における最大の功労者は間違ひなく志位委員長であり、日本共産党である。この献身を国民は見てゐる。立派だ。これが報はれなくては世の中闇だゾ。

 今夜遅くには結果が出るだらう。ぼくは雨の音を聞きながら野党共闘側の躍進を祈ることにする。

 では続いて備忘のため、朝鮮半島に関する注目記事をチェックしていく。

 まづ、ハンギョレに掲載された米モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団のフランク・ジャヌージ代表へのインタビュー。掬すべき意見が多く、今後も読み返すことがあると思ふ。

 とりはけ、南北朝鮮それぞれの自尊心に関して述べた箇所が、ぼくにはとても印象深かった。以下、引用しておく。

japan.hani.co.kr

 

 「太陽政策」は、部分的には北朝鮮に対する比較優位に立脚した韓国の自負心に基づいていたといえる。しかし、北朝鮮の6回目の核実験、特に成功的な水爆実験で、韓国の人々は自尊心をかなり傷つけられた。戦術核兵器核武装なしでもこのような相対的剥奪感を克服できる方法があるだろうか。

 「実は、北朝鮮核兵器は単なる軍事安保に関わるものではない。核兵器は政治的安定あるいは政治的自尊心、南北間の自負心の競争などに関わるものでもある。このような点のために、北朝鮮核兵器を放棄するように説得することがあれほど難しいのだ。

 北朝鮮がどうして軽水炉を欲しがっていたと思うか。部分的には韓国が持っているからだ。なぜ韓国はミサイルプログラムを望んでいるのか? 北朝鮮が持っているからだ。北朝鮮が衛星を打ち上げるのに、どうして韓国が衛星を発射できないかということだ。このような自尊心の領域は本当に実在する部分だ。

 太陽政策は、部分的には韓国が成し遂げたことに対する自負心から出たものと考える。民主主義、活力ある経済、経済的に豊かで立派な教育を受けた人たちなど。韓国人はそのような自負心を北朝鮮に示したがっていた。私は韓国が依然としてこのようなすべてのものについて自負心を持つことができると思う。韓国が(北朝鮮核兵器保有を)恥辱と考える必要はない。韓国は依然として生活水準や政治、人権など、全ての要素ではるかに優れた国だからだ。

 南北関係は、これまで一方的だった。北朝鮮は、核兵器を持っているという自負心が生じて、南北交流を受け入れることがさらに容易になるかもしれない」

 安倍政権からは相変はらず「圧力を加える」「国民を守る」といふお題目以上の言葉は出てきてゐない。半島の危機は収まってゐないが安倍政権は現状、この危機収束のために何一つ建設的なメッセージを発してゐない。「対話の試みは無に帰した。今は圧力だ」と言ひ放ち、そのままだ。

 が、米国は対話・交渉の努力を続けてゐる。もちろん本当に戦争になったら困るからだ。

 ハンギョレによれば15日、米国のティラーソン国務長官北朝鮮との外交的努力を「最初の爆弾が落ちる時まで続ける」と明らかにした。

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 記事にはかうある「これは、北朝鮮が米国に先制攻撃をしない限り、米国も先に北朝鮮を物理的に打撃することはないという意味で、今まで出た米当局者の発言のうち、最も明確に先制的な対北朝鮮軍事行動に線を引くような立場を明らかにしたものだ。」

 かうした米国が示す交渉への意志についてどう考へてゐるのか、ジャナーリストは安倍晋三に問ふて欲しいと思ふ。

 安倍政権は呪文のやうに圧力強化を叫ぶが、その先の出口戦略もなく、いかなるビジョンも示してゐない。圧力の結果、本当に戦争が起こったときのことも考へてゐない。都合の悪いことは起こらないといふ前提らしい。その愚鈍には戦慄せざるを得ない。

 18日、韓国のチョ・ミョンギュン統一部長官は「冷静に見れば、北朝鮮核兵器を放棄する可能性はきわめて低いと考える」「遠回しに言ってきわめて低いと言っても、現時点では北朝鮮核兵器を放棄する可能性は事実上ないといっても構わないほどに(北朝鮮が)核兵器を生命の紐と考えている」と述べた。

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 さうだと思ふ。核・ミサイルの保有・開発を絶対に認めないといふ頑なな態度では事態は動かない。すでに、関係諸国のメンツを損なはずに「いかにして、又、どんな形態で北朝鮮の核保有を認めるのか」を考へる段階に来てゐるのではないだらうか。

 これについてはぼく自身、うまく考へがまとまらない。さしあたって、米国のロバート・ゲーツ元国防長官の提言を紹介しておく。

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以下↑のハンギョレ記事から引用。

 ゲーツ氏は「北朝鮮核兵器を放棄させることはできないと思う」とし、「金正恩は、核兵器を生存に欠かせないものと考えている。しかし、運搬システムを短距離のものに制限することはできるだろう」と指摘した。

 特に、ゲーツ氏は、北朝鮮の核保有を制限的に「保障」(insure)する査察を行おうという大胆な提案もした。米国は中国を通じて、いかなる外交的解決策においても、10~20個の核兵器を超えない限られた核の保有を保障すると共に、これ以上の核兵器やさらに進展した運搬能力を開発しないことを明確にする査察に、北朝鮮が同意すべきだと伝えなければならないということだ。

 さて、朝鮮半島周辺では16日から20日まで米韓合同軍事演習が行はれてゐたが、北朝鮮はミサイル発射実験等の対抗措置はとらず、いつも通りの非難声明を出すにとどまった。

 18日には中国共産党の第19回党大会が開幕し(24日に閉幕)、北朝鮮は「中国人民はこの間、共産党の正確な領導(指導)下で中国独特の社会主義建設の偉業遂行で大きな前進を実現し、大変うれしく思っている」「第19回大会が円満な成果を挙げることを心から祈る」と祝電を送った。

japanese.yonhapnews.co.kr

 党大会が閉幕すれば北側の新たな動きがあるかもしれない。米国ティラーソン国務長官の辞任説も聞こえてくる。日本政府は必死になって情報を収集し東アジアの平和のために新しい枠組みを考へなくてはいけないはずだが、この時期に、安部晋三は森友・加家問題の追及から逃れるために解散権を乱用し選挙に踏み切ったのだ。まことに、犯罪的なまでに卑怯だ。