するってぇとナニかい

ー半島情勢を中心にー

朝鮮労働党創建72周年

 10月10日、北朝鮮朝鮮労働党は創建72周年を迎へたが、憂慮されてゐたやうなミサイル発射等の追加挑発行為はなかった。党機関紙である労働新聞は社説で、“核と経済の並進路線”を繰り返し前面に掲げ核・ミサイル開発を加速させる方針を改めて表明した。

 ミサイル発射はなかったが緊張は少しも和らいでゐない。今後も米韓軍事演習が控へてをり、それに対抗するかたちで北がミサイル発射等で威嚇をする可能性は高い。

北朝鮮、労働党創建日の10日を静かに過ごすか : 政治 : ハンギョレ

 注目すべき米朝の発言・主張を追ってみよう。

 9月15日、北朝鮮は中距離弾道ミサイル「火星12」を発射した。ミサイルは北海道上空を通過、発射地点から約3700キロ飛行し太平洋上に落下した。

 朝鮮中央通信によれば、現地指導にあたってゐた金正恩朝鮮労働党委員長は以下のやうに述べたといふ。

「われわれの最終目標は米国との実質的な力の均衡を達成することで、米国の執権者の口からわが国に対する軍事的な選択だ何だのというざれ言が出ないようにすることだ」

「火星12」の戦力化成功を宣言 正恩氏が発射を現地指導

 9月19日、トランプ米大統領はニューヨークの国連本部で行った就任後初の一般討論演説において「米国は強大な力と忍耐力を持ち合わせているが、米国自身、もしくは米国の同盟国を守る必要に迫られた場合、北朝鮮を完全に破壊する以外の選択肢はなくなる」と述べた。

 それに反応した朝鮮労働党中央委員会は9月24日、「世界各国の政党に送る公開書簡」を発表した。

Naenara-朝鮮民主主義人民共和国

「すでに報道された通り、米国執権者トランプは、国際的正義を実現することを基本的使命としている神聖な国連の舞台を悪用して敢えて朝鮮民主主義人民共和国の最高尊厳を傷つけ、朝鮮の国家と人民の「完全破壊」について公言する前代未聞の暴挙を働きました。」

「全人類がはっきりと覚えているのように、米国は世界で最初に核兵器を作った国であり、核兵器を実戦に使って数十万の無辜の人民を殺戮した国です。

1950年代の朝鮮戦争の時期、原子爆弾を使用するとわが国を公然と威嚇し、戦後、朝鮮半島に初めて核兵器を搬入した国もほかならぬ米国です。

このような世界最大の核保有国の執権者の口から「火炎と憤怒」、「完全破壊」といった核威嚇暴言が毎日のように吐かれていることが今日の現実です。

朝鮮労働党の戦略的核武力建設構想は徹頭徹尾、世紀をついで続けられている米国の核脅威を根源的に終わらせ、米国の軍事侵略を阻止するための戦争抑止力を整えることであり、われわれの最終的目標は米国と力の均衡を保つことです。」

  ぼくはむろん核の拡散には反対であるが、「筋」だけを言ふならば、北の言ひ分のほうが筋が通ってゐるやうに思へる。核保有国が「核無き世界」に向けて動いてゐない状況で、米韓日が「軍事的抑止力」によって北の核保有を抑へこむといふ方針は説得力を持たない。

 軍事オプションを採用するのか、交渉を再開し粘り強く落しどころを探るのか。

 米国はことあるごとに「全ての選択肢がテーブルの上にある」と表明してきたが(安倍晋三はそれを全面的に支持してゐる)、現実的には、先制攻撃は難しいし、あってはならないことである。

 9月25日、米国のハーバート・マクマスター国家安保補佐官は「北朝鮮核問題を解くことのできる精密打撃は存在しない」「北朝鮮核問題を解くことのできる軍事封鎖も存在しない」と述べてゐる。

米安保補佐官「精密打撃では北朝鮮核問題は解けない」 : 国際 : ハンギョレ

 又、スティーブ・バノン前ホワイトハウス首席戦略官が8月に「軍事的な解決策はない。それは忘れてしまっていい」「誰かが(戦争開始の)最初の30分で通常兵器による攻撃で1千万人のソウル市民が死なないという方程式を解かない限り、軍事的な解決策はない」と述べたことも記憶に新しい。

“トランプ右腕”バノン氏「北朝鮮問題、軍事的な解決策は忘れていい」 : 国際 : ハンギョレ

 10月9日にはマーク・ミリー米陸軍参謀総長が「朝鮮半島での全面戦はいくら考えてみても恐ろしい」「容易で危険のない、いい(軍事)オプションはない。そのようなオプションは極めて困難で危険だ。誰もそのこと(危険)を過小評価してはならない」と述べた。

米陸軍参謀総長「危険のない対北朝鮮軍事オプションはない」 : 国際 : ハンギョレ

 さうだ。だから、何とかして対話の糸口を見つけなくてはいけないのだ。トランプは軍事的オプションをちらつかせ、安倍は「対話には意味がないから圧力を」と叫んでゐるが、本当に戦争になればソウルは壊滅し、日本が米国を支持した場合は当然攻撃対象になるのだからミサイルが飛んでくる。

 原発を狙はれたら終はりだ。拉致問題どころの騒ぎではない、今日本列島で生きてゐる人たちが何百万人も死ぬ。北朝鮮軍はゲリラ化し戦争が長期化してアフガン以上の泥沼となるかも知れない。だから何とか両者が矛を収めて対話を再開しなくてはいけない。

 安倍にはそのつもりはない。安倍は東アジアの平和も朝鮮半島の統一も望んでゐない。戦争が起こって「こんな憲法では日本を守れない」と大騒ぎして改憲できればいいくらゐに思ってゐる。この積極的危機招来主義者が今度の選挙でも勝ちさうである。

 が、幸ひなことに安倍は半島情勢においては端役である。問題は米国の態度なのであって、彼らは対話への意志を示し続けてゐる。

 9月30日、中国を訪問したレックス・ティラーソン米国務長官は「われわれは北朝鮮政府との複数の対話手段を保持している。暗闇のような状態にいるわけではなく、北朝鮮に通じる2~3のチャンネルを持っている」「われわれは北朝鮮に話し掛けることができるし、実際にそうしている」と述べた。

米、「独自のチャンネル」で北朝鮮と直接接触 ティラーソン国務長官 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News

 更に、ジミー・カーター米大統領が、朝米間の仲裁のために、北朝鮮への訪問を希望してゐるとの報道も出てゐる。

「カーター、北朝鮮側に訪朝意志を伝達…金正恩と対話希望」 : 国際 : ハンギョレ

 彼らの努力が実ることを切に願ふが、最大権力者たるトランプはどうも対話路線が気に入らないらしい。

 トランプは10月1日にツイッターに「ティラーソンはリトルロケットマンと交渉して時間を無駄にしてゐる」と投稿した。

 ティラーソンはその後、「不満はない」「辞める気はない」と言ったりしてゐるが、年内にも辞任するのではないかと観察する人もゐる。彼はこれまでトランプが過激な発言で北朝鮮を挑発する度に、対話路線を強調しバランスをとって来た人物だ。本当にティラーソンが辞任するやうなことがあれば彼が探ってゐるといふ交渉への道も途切れてしまふかも知れない。続報を注視したい。

 10月13日、トランプは演説を行ひ、米国・英国・ドイツ・ロシア・フランス・中国の6カ国が一昨年イランと結んだ核合意を「認めない」「不公平な合意である」と主張した。これを受けて英仏独の首脳は「影響を懸念する」との共同声明を発表した。

核合意への信頼揺るがない=英独仏:時事ドットコム

 さらに中国の環境時報は14日「イラン核合意をどうするか、米国が勝手に決めていいものではない」と題する社説を掲げ、その中で以下のやうに述べ、北朝鮮問題への影響に言及した。

「イラン核合意は確かに完全なものではないが、それは北朝鮮核問題等の政治的解決のための、一つの範例となるものだ。その歴史的な意義は、政治的交渉によって各方面の共通の利益を見出し、そうして多国間交渉により難題解決への道を作りだしたことにある。イラン核合意が一旦破綻してしまえば、当然のように北朝鮮核問題の政治的解決はより困難になる。ピョンヤンは、国際的な合意を気ままに覆す米国を信頼に足る交渉相手と見なさなくなるだろうから。」

社评:伊朗核协议怎么样,不是美国说了算_评论_环球网

 ぼくはこの社説に完全に同意する。

 かういふ動きに対して指南力のあるコメントを出すことができれば日本の国際的な存在感が増すはずなのだが、そんなもの安倍首相には・・・望むべくもない、か。